大阪の新店舗が大盛況! 資さんうどんが乗り越えてきた、各地の「うどん文化」長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2023年12月10日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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東京進出はまだまだ先か

 大阪はうどんに限らず、お好み焼き、たこ焼きなど「こなもん」を好む文化があり、恐らくその傾向は今後も変わらないだろう。資さんうどんではやらないだろうが、肉ごぼ天うどんからうどんを抜いた「肉ごぼ天吸い」といったものを出して、卵かけごはんとセットにすれば流行するのではないかと個人的に思う。

 実際に、難波の老舗うどん店「千とせ」は肉うどんが名物だったが、今はそれ以上に肉うどんからうどんを抜いた「肉吸い」が売りになっている。小ぶりの茶碗に入った卵かけごはん「小玉」とセットで注文する人が多い。

千とせ、肉吸いと小玉のセット

 また、大阪では「油かす」という牛ホルモンをカラっと揚げたものを入れた「かすうどん」が流行してきている。もともと南東部の南河内・藤井寺市の名物だった肉うどんから派生したものだ。

大阪で流行する、かすうどん。写真は加寿屋のもの

 ちなみに資さんの屋号は、大西章資氏の名前「章資」の「資」が由来である。18年に3代目社長へ就任した佐藤崇史氏の指揮下で、直近ではさらに広い地域に資さんうどんの味を広げる出店攻勢をかけている。九州の全県に出店を完了し、岡山、そして大阪と順調に拡大路線を歩んでいる。

 なお資さんは、18年に後継者問題から投資ファンドのユニゾンキャピタルが買収した。当時の年商は約70億円、店舗数は42店だった。ユニゾンキャピタルはスシローを運営するあきんどスシローに投資をして、国内随一の回転寿司チェーンに成長させた実績がある。スシローは海外出店にも積極的で、今や世界的な企業に成長しつつある。資さんうどんに同様の夢を託しているのだ。

 佐藤氏はソニー入社後、ボストン・コンサルティング・グループに転職。06年からはファーストリテイリングに転じ、経営変革・グループ戦略・人事・店舗運営・社長室などの責任者を歴任。16年には「三田製麺所」「渋谷餃子」を展開する外食企業のエムピーキッチン(東京都渋谷区)の代表取締役社長に就任――といった経歴を持つ。世界的な大手企業、外食ベンチャーで経営者としてキャリアを積んできた、その手腕に期待がかかる。

 佐藤氏が率いた5年間で、資さんの年商は約124億円と100億円を超えた。今では年間延べ1600万人が来店するという。さらに大阪での成功が見えてきて、そろそろ東京に進出かとも噂される。しかし、同社では「関西の皆さまに受け入れていただくことが直近の目標」としており、それが叶うことで、全国展開の足掛かりとしていくという。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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