現在、インサイドセールスと連携している営業部門は200弱に上る。インサイドセールスのメンバーも100人ほどに増え、これまではベンダーを活用していたが現在は内製化した。
今後は「内製化の次のステップとして、業種・業態に合ったインサイドセールスチームを作っていきたい」(友廣氏)と話す。7月半ばくらいから取り組んでおり、顧客セグメント(超大手・準大手・中堅中小)をベースに製造・非製造などの業種軸でチームを分けるイメージだ。
動き始めてから4カ月ほど経つが、進捗としてはどうだろうか? 「正直大変なことは多いです。体制変更は、これまで通りを壊していく動きになります。それに難色を示すメンバーもいますが、富士通の営業が変わっていっているのであれば、僕らも変わらなければいけないと思っています。メンバーの気持ちを大切にしながら、変わり続け成長し続ける組織にしていくのがリーダーとしての役目だと考えています」(友廣氏)
引き渡すリードの数という数字的な成果も9月ごろから出始めてきたという。「PoCから意識してきた、引き渡すリードの条件をちゃんと営業部門と握るのは現在も丁寧にやっています。正直、すごく負荷がかかる取り組みではあるのですが、お互いがリクエストをして最初にしっかり目線合わせをすることで、満足度も高まりますし、最終的な商談進捗率も上がってきています」(及川氏)
インサイドセールスチームが課題と定義した「引き渡すリードの質」は、マーケティング部と営業部門を一瞬で犬猿の仲に変えてしまうほど重要なテーマだといえる。営業社員が8000人に上るような大企業ではなおさらだ。インサイドセールスが緩衝材として調整機能を担うことで、効率的・効果的に営業活動の歯車が回っていることが良く分かる。
最後に、友廣氏は「富士通版THE MODELで海外市場に打って出たい。まずは北米を中心とするアメリカス・リージョンから攻めていく」と展望を話す。
そもそもTHE MODELは、ベンチャーなどの中堅中小企業の営業効率化を実現する考え方とされている。富士通のように1000億円以上の大企業をターゲットにする企業が、インサイドセールスを採用し、THE MODEL型の営業組織を構築すること自体がレアなケースなのだ。富士通で実現できたわけは、同社の豊富な製品ポートフォリオにある。富士通のターゲットとなるのはIT部門に限らない。営業、人事、総務など幅広い部署がターゲットになり得るし、ニーズに合致する製品も提供できる。海外展開の際は、そういったLOBはもちろん、支店や工場などへの提案も広げていく。
「正直、今の日本企業はあまり元気がないです。そのため、内需に期待するのは限界があります。日本企業が海外でどうモノを売っていくかに目を向ける必要があると思います。富士通がその見本になれればと」(友廣氏)
富士通は、多種多様なポートフォリオという大きく頑丈な船を持っていた。そこにこの3年で、超大手企業を攻略する知見と経験を持つインサイドセールスというオールが何本も載せられた。乗組員も増えている。新天地に向けて大きく漕ぎ出せるか、インサイドセールスチームの航海はまだ始まったばかりだ。
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