PoCの最終成果は、合計600社1400部門へのアプローチと、100件ほどの新規獲得、33件の受注だった。7億円ほどの大型案件を獲得できたケースもあるという。快挙の裏にはインサイドセールスチームの涙ぐましい努力があった。
友廣氏は活動の軸として「インサイドセールスと営業部門で期待値を握ることの重要性」を挙げた。特に、PoCの中で「マーケティング部が持ってくるリードは役に立たない」という営業側の先入観を払しょくしたいと考えており、引き継ぐリードの条件設定と密な情報共有を徹底した。
第一指標として、アプローチリストの5〜10%開拓を掲げた。その他にも、どれくらいキーパーソンを発掘するかなどの細かい指標も設定した。
「マーケティング部経由のリードは質がまちまちです。先方の温度感や予算の問題、興味関心や決裁者かどうかなど、細かい部分が不透明なことが多いです。イベントへの申し込み有無という基準で精査して営業に引き渡しても、営業もどこから着手すれば案件化できるのか分からない。既にアプローチ済みの担当者という可能性すらあります。結果として、マーケと営業間で、なぜリードを引き継いだのにフォローしないのか? という議論に発展します。こういった状況をなくすために、リードの条件を擦り合わせました」(及川氏)。
日々の活動などの情報共有については、透明性を高く営業との信頼関係を構築できるよう3つのステップを踏んでいた。
「まず、各プロジェクトの日次進捗をTeams内で共有していました。デイリーで起こっていることを全て営業向けに報告するんです。2つ目にCRMのダッシュボードを作成し、分単位でインサイドセールスチームの活動を見える化。最後に、2週間に1度の頻度で進捗ミーティングを実施していました」(友廣氏)
これまでの富士通の営業組織は属人的だったため、営業状況の管理は個々人で完結していた。そのため、こういったデジタルツール活用やチーム間でのコミュニケーションはほとんどなかった。及川氏は「特に『インサイドセールスチームからはCRMをベースに情報を引き渡すので、営業部門側もそれを見て進捗を把握してください』という提案には相当反発がありました」と振り返る。
エクセルでの個人に閉じた管理という慣習を取り除き、ツール上でのデータ管理が当たり前になれば、富士通のデータドリブンにもつながっていくと考えたインサイドセールスチームは、営業部門に強気に提案。マニュアルを作成し、使い方のレクチャーを何回も実施することで、データ管理の有用性を実感させた。
インサイドセールスと営業部門で期待値と成果を握り、密なコミュニケーションを繰り返した結果、PoC実施後のアンケートでは95%が「活動の継続を希望する」と回答。「準備に時間がかかる」「インサイドセールスを入れて新しいアプローチをしたけど、そもそも新規開拓が難しい案件だった」という意見もあったが、数カ月前にインサイドセールスに向けられていた懐疑的な視線は薄れていった。
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