マーケティング・シンカ論

サンリオはなぜ「他のアイドル推し」グッズを展開するのか?エンタメ×ビジネスを科学する(2/3 ページ)

» 2023年12月14日 10時05分 公開
[滑健作ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大により多くのイベントが中止となった2020年に行ったアンケート調査では、損失を被ったスポーツや演劇・ミュージカルの団体や事業者に対して、参加層の56〜57%が金銭的支援の意向を持っていると回答している。

 特に音楽の分野では参加層の71%が金銭的支援の意向を持つという結果も出ている。音楽や演劇・ミュージカルでは特にタレント・アーティスト・演者本人への支援意向が高い。こうした調査からも「推し活」は推しの対象を消費で応援するマインドが定着しているといえる。

 また推し活を行うファンは単にお金を使うだけではない。グッズを使用し、身にまとい、SNSなどで推し活を発信することで、自己肯定感の向上、自己実現につなげているケースも多くある。これをビジネスの視点で見ると、推し活グッズは多くの露出が望めるプロダクトでもあるのだ。

 このように述べると大きなビジネスチャンスがあるように見えるが、みだりに商品展開をすればよいわけではない。特にこの推し活の領域は、ファンから事業者本意(商売の臭い)を感じられてしまうとファンが離れてしまう傾向が強い。推し活を行うファンが本当に必要としており、本当に使えるプロダクトでなければ支持されないのだ。

写真はイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

 その点、サンリオの推し活グッズは推し活を行うファンが「絶妙に欲しくなるライン」を狙って商品展開を行っている。このラインはデータで語るにはまだ整備されておらず、実際に推し活を行う人の感性がなければ見極められない。

 おそらくサンリオ内部でも、推し活を理解する人とそうでない人の間で商品企画に関する激論が交わされたことだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.