「リニア中央新幹線」の静岡は、いまどうなっているのか 論点を整理してみた杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/8 ページ)

» 2023年12月15日 09時55分 公開
[杉山淳一ITmedia]

主な論点は3つ

 国はリニア中央新幹線の建設許可を出した。しかし静岡工区の工事が許可されない。工事現場ごとに地権者や管理者の個別の許可が必要になるからだ。ほかの公共工事でも、建設許可が出たあとで、クレーン車作業の道路占有許可とか、大型車両通行許可が必要になる。規模は違うけれども仕組みは同じ。国が建設を認めても、適切な手順を通さないと、現場の管理者である自治体は工事許可を出さない。

静岡工区は静岡県境の内側にある。静岡県の工事許可は県境から県境まで。そして長野県側、山梨県側とも県境に達していない(出典:JR東海、大井川の水を守るために 南アルプストンネルにおける取組み
トンネルの構成概略図。斜坑は2本つくられ、非常口として再利用する(出典:JR東海、大井川の水を守るために 南アルプストンネルにおける取組み

 トンネル建設は「地表の作業拠点から斜坑を掘る」「地質調査と工事車両の作業用に先進坑を掘る」「先進坑に平行して本坑を掘る」の順で進める。斜坑は、静岡市葵区の西俣と千石の2本。このほかに、西俣斜坑と千石斜坑を結ぶ工事用道路トンネルと、トンネル内の出水を大井川に戻すための導水路トンネルを掘る。

 先進坑はトンネル完成後に避難通路や保守資材置き場などで再利用される。作業拠点は非常出口として整備する。工事用道路トンネルは非常時の避難通路であり、救急車両が通る。

 この静岡工区で静岡県側が問題視している論点は主に3つある。「水問題」「生態系環境問題」「残土処理問題」だ。

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