「リニア中央新幹線」の静岡は、いまどうなっているのか 論点を整理してみた杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/8 ページ)

» 2023年12月15日 09時55分 公開
[杉山淳一ITmedia]

決着近し:トンネル残土の盛土

 トンネルを掘れば土が出る。「その土をどこへ盛っていこうか」という話である。JR東海は燕沢(つばくろ)、藤島、剃石(すりいし)の3カ所を選定した。すでに土地所有者と合意済みだ。工事現場に近く、人里から離れた山奥のため、ダンプカーが走っても人々の生活に支障はない。

 静岡市の難波喬司市長は23年9月の定例会見で「JR東海の発生土置場候補地を否定しない」と表明した。川勝知事は難波市長の技術官僚の実績を評価しているから、「否定する理由はない」と同調した。ただし「盛土計画地は高確率で深層崩壊が起きるため懸念がある」とした。

 そして難波市長が23年12月5日の記者会見で「JR東海の設置方法で概ね問題ない」と表明した。静岡県が懸念を示した土砂崩れの懸念について、一定量の土砂崩れにおいては、むしろ下流域の影響を止める役目を果たすと解説した。県が指摘した大規模な土砂崩れが起きた場合は、もはや盛土の有無に関係なく崩れていく。その予測と対策は河川管理者の県に責任があり、JR東海は責任を負わないという見解を示した。

 難波市長の会見で、川勝知事の「懸念」は河川管理者の静岡県に責任があるとされたわけで、盛土についても決着の方向は見えた。

「盛土」というと熱海の土砂崩れを連想するけれども、不法投棄業者がただ積み上げた盛土とは全く違う。高度な土木技術の元で造られる盛土は堅牢だ。東海道新幹線なども盛土区間があり、これまで自然災害で崩れたことはない。静岡空港も盛土で造られている。有害物質を含む土は遮水シートで外部と遮断され、土の自重で染み出した水は水質を調査して基準をクリアさせて排水する(出典:JR東海、大井川の水を守るために 南アルプストンネルにおける取組み

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