たまごっちは、お世話が必要なときに「呼び出し」をします。サインが画面に表示されるだけでなく、呼び出し音を鳴らしユーザーにアピールしてきます。
呼び出されてから15分以内に対応できるかどうかが、進化のカギになるキャラクターも多いです。ユーザーが先述の攻略法を把握している場合は特に、定期的にたまごっちのお世話を促す重要なトリガーとなっています。
そして、この呼び出し音が、コロナ禍で定着したリモートワークの弊害である「オンオフの切り替えが難しい問題」の解消にも一役買っていると筆者は考えています。
仕事の合間の息抜きとしてササっとたまごっちのお世話をすることで、サボるとまではいかないけれど、脳の中に「仕事モードじゃない自分」を少しだけ横入りさせる感覚。これは毎日会社に行って働くことが当たり前だった時代には生まれなかった、大人とたまごっちの新たな関係性だといえるでしょう。
また、たまごっちはゲームとしての設計が優れているだけでなく、「持ちたい」「触りたい」「身につけたい」という愛着をも醸成しています。その愛着醸成に一役買っているのが「推し活」です。
その代表例として、Z世代を中心に人気を博すHIPHOP/R&Bガールズグループ「XG(エックスジー)」ファンの間でたまごっち人気が沸騰したことが挙げられます。
XGは、レトロなおもちゃをアクセサリーに昇華させるのが得意な海外ブランド「Laser Kitten(レイザーキトゥン)」が制作した、たまごっちをモチーフにしたアクセサリーを身に付け、平成ギャルの「盛る」「デコる」を彷彿(ほうふつ)とさせるあしらいでコンセプトフォトに登場。それをきっかけに、ファンの間でたまごっちの存在にも注目が集まりました。
XGだけでなく、K-POPアイドルグループ「SEVENTEEN」のジョンハンや「LE SSERAFIM」のユンジンをはじめ、たまごっちをゲームとして楽しんでいるアイドルも数年前から散見されるように。
「推しが持っているから真似(まね)したい」という動機でたまごっちを手にする「推し活」が追い風になっている側面も、無視できない事象でしょう。筆者が最近たまごっちを購入したのも、まさに推しのユンジンが使っていたのがきっかけです。
たまごっち再流行の背景には、人間が行動を起こす要素をうまく捉えたゲームとしての普遍的な価値に加え、リモートワークや推し活といった時代の流れにうまくピースとしてハマったことが後押しとなっていると考えられます。
たまごっちに限らず、ブームが再来しているプロダクトやサービスには、「動機(Motivation)」「実行能力(Ability)」「きっかけ(Trigger)」の3要素が隠されているかもしれません。2023年の仕事が納まった暁には、そうした仕掛けに思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
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