「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
仕事が納まった人にもそうでない人にも等しく、今年もまたクリスマスがやってきます。
今から約25年前のクリスマス、一世を風靡した「たまごっち」をプレゼントに買い求める“サンタさん”でホビーショップは賑(にぎ)わいました。その後、さまざまな進化を遂げたたまごっちシリーズが続々と誕生し、今や子どもはもちろん、大人世代にも人気のおもちゃとなっていることはご存じでしょうか。
発売から25年以上も愛され続けるブランド力に舌を巻くばかりですが、なぜ今、幅広い世代で再びブームになっているのでしょうか。時代に合わせた新機能か、はたまたZ世代の間で流行っている「平成レトロ」ブームの影響か──この記事では、UXデザインの観点から、その理由や背景を探っていきます。
たまごっちは、多くの読者にとって「子どものころに遊んだ」「子どもに買い与えた」経験のある、なじみ深い存在かと思います。まずは、その歴史を改めておさらいしましょう。
初代たまごっちは、1996年11月に「デジタル携帯ペット」というコンセプトでバンダイが発売した携帯型のおもちゃです。当時女子高生を中心に大ブームを巻き起こし、品切れが続出しました。
ごはんをあげたり、うんちを流したり、病気を治したり……といったお世話はもちろん、しつけをしたり、ミニゲームで遊んだり。育て方次第でいろいろなキャラクターに成長します。甲斐甲斐(かいがい)しくお世話をするだけでなく、ファッションアイテムとして楽しむ風潮も。街にはボールチェーンで服やバッグに取りつけて持ち歩く女子高生が溢(あふ)れていました。
2004年以降、たまごっちシリーズのターゲット世代は高校生から小学生に変わりました。赤外線通信機能など時代に合わせた新機能が搭載され、第二次ブームが到来します。そこから小学生のみならず、第一次ブームのときにたまごっちで遊んでいた、30〜40代の大人たちにもブームが派生していきました。
今や大人たちまでも夢中になって遊び続けるたまごっち。果たしてお世話をする楽しさや、かつて遊んでいたという懐かしさだけで、ハマっているのでしょうか?
人間は、「動機」「実行能力」「きっかけ」の3つの要素がそろって初めて行動を起こすとされており、学術的にも「フォッグの消費者行動モデル」として定義されています。幅広い世代の人々がたまごっちに夢中になる仕組みを、このモデルになぞらえて、ひも解いていきましょう。
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