新NISA目前、クレカ各社「月10万円積み立て」実現に意欲 法令が壁に対応に差(2/2 ページ)

» 2023年12月26日 16時15分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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10万円への拡大、なぜ難しい?

 さて、すでに10万円に拡大した証券会社と、法令対応を待って対応するという証券会社の違いはどこにあるのだろうか。法令では、クレカ積み立てにおける信用供与が10万円を超えてはいけないと決まっている。通常、積み立ての締め日と支払い日を考えると、2カ月分の積み立てが重複する期間が発生するため、各社はこれまで5万円を上限としてきた。

 すでに拡大を果たしたtsumiki証券の手法は、クレカ積立分のカード引き落とし日を、次回分のクレカ積立の買付日や約定日よりも前に設定することで、法令に対応していると見られる。

 実際にtsumiki証券の日程を見ると、支払い日よりも前に買付を完了するように設定していることが分かる。次回の買付の前に支払いが終わっていれば重複は起こらず、信用供与は10万円を超えない。同社の青木正久CEOは「信用供与の捉え方を再定義した」と説明しており、投信の買付日を信用供与の日だと捉えればこの形で説明が付く。

tsumiki証券のクレカ積立買付日とクレカ引き落とし日のスケジュール

 ただし、他のカードでも同じようにできるわけではない。例えば、楽天カードを見ると、毎月17日にカード認証が行われ、翌1日/8日に買付、27日にカード支払いが行われる。カード認証を信用供与だと捉えれば、カード支払い前に、翌月のカード認証が発生するため、信用供与が重複してしまう。

 各社が「法令改正があり次第」とコメントしているのは、カードの決済日などの仕組みに踏み込まずに10万円にアップさせるためだろう。金融庁では、新NISAを機にクレカ積立の上限額を10万円にアップする議論がなされており、これに沿って法令改正が行われれば、現状の仕組みのままでも積立上限を10万円に拡大できることになる。

これまでの上限5万円から10万円への拡大が議論されている(金融庁資料より)

 ただし1月の積み立てには、法改正とシステム改修は間に合わないだろう。各社が意欲を燃やす上限拡大だが、スケジュールについてはまだ不透明だ。

筆者プロフィール:斎藤健二

金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。


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