JCB、一般カードを“年会費無料”に 「JCBカード S」投入のワケ無料化の波

» 2023年12月05日 14時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 ジェーシービー(JCB)は12月5日、従来のJCB一般カードに代わる新たなスタンダードカード「JCBカード S」の発行を開始した。従来の一般カードでかかっていた年会費1375円を無料としたのが大きな特徴だ。

それはなぜか。「40代以上の人が入れるスタンダードカードを用意したかった」とカードSを担当した上野文香氏(イシュイング本部 イシュイング推進部 プロパー推進グループ)は話す。

 これまでJCBが用意していた年会費無料カードは「JCBカード W」と「JCBカード W plus L」が中心。2017年に投入した「JCBカード W」は、年会費無料とポイント還元率1%を特徴とし、若年層の開拓に成功した。特に20代におけるシェアが向上したという。

 ただしこの2つのカードを申し込めるのは39歳以下限定。40歳以上のユーザーにとって、無料カードの選択肢となることを狙ったのが今回のカード Sとなる。「カードWは、2倍貯まるなどポイント特化で若年層向け、カードSはもう少し年代の上のファミリー層がターゲット」(上野氏)という位置づけだ。

40代以上にも朗報。JCBが年会費無料のカード Sを投入

年会費無料化の波

 JCBがカード Sで年会費を無料化した背景には、業界全体で進む年会費の低廉化があるだろう。セゾンカードやエポスカード、楽天カードなどは初期から年会費無料だったが、年会費有料だったカードの無料化が目立ってきた。直近の転機となったのは三井住友カードのナンバーレス(NL)だろう。同社は21年2月に券面にカード番号を記載しないナンバーレス化とともに年会費を無料にした。

 現在、銀行系のカードやJR系のViewカードを除けば、年会費有料の一般カードのほうが珍しいくらいだ。

 ゴールドカードについても、年会費無料の波がやってきている。イオンカード、セゾンカード、エポスカードなどは、一般カードのヘビーユーザーに対してアップグレード特典として年会費無料でゴールドカードを提供していた。ところが三井住友カードは「年間100万円以上の利用でゴールドカードの年会費を無料に」と明記。5000円〜1万円程度の年会費が相場だったゴールドカードについても、無料化が一気に進んだ形だ。

 日本のカード市場は、ポイント還元や年会費無料などお得感を重視するユーザーと、特典やハイステータス性を重視するユーザーに二極化しつつあるともいわれる。そして特に重要になってきているのがポイント還元だ。キャッシュレス決済のユーザー満足度調査などを手掛けるJ.D.パワーは、諸外国に比べても、国内ユーザーはポイント還元を重視すると話す。

 「弊社が実施するクレジットカード顧客満足度調査やQRコード・バーコード顧客満足度調査の結果からも、ポイントは日本の消費者において満足度を決める重要な要素の一つといえる」(J.D.パワー)

 JCBはカード Sを投入することで、激戦区である年会費無料カードに本格参入するといえるだろう。

新券面デザインと優待サービス

 年会費無料化だけでなく、カード Sでは券面デザインも進化している。和をイメージし漢字の“一”をあしらったデザインを継承(記事参照)しつつ、色合いはわずかにアンバー味を持たせた。家族の温かな様子をイメージし、従来の一般カードのシルバーに比べ、温かみのある色を目指したという。

 さらにJCBゴールドカードに続き、植物由来の原料を採用したバイオマスカードも用意した。カードを廃棄、償却するときに発生するCO2と、植物が吸収するCO2が同量となり、カーボンニュートラルの実現に貢献するという。

これまでJCBゴールドカードだけに存在したバイオマスカードを、カード Sには用意した

 20万カ所以上の施設で割引が受けられる「JCBカード S 優待 クラブオフ」も用意した。国内2万件以上のホテルや旅館を最大80%オフで宿泊できたり、全国1000カ所以上のテーマパークや遊園地を最大60%オフで利用でき、イオンシネマが500円引きで利用できるなどの特典を受けられる。

 これはJCBが発行するゴールド以上の法人カード向け特典「JCBビジネスカードClub Off」と似たものだ。ただし「車購入カテゴリー」は法人カード向けにはなく、カード S向けだけとなる。また法人カードでは追加料金を払うことでVIP会員になれるという違いがある。

ゴールドカード向け特典として使われる優待サービスをカード Sユーザー向けに提供する

 カード Sは、基本的には年会費が無料でありながら、従来のJCB一般カードの上位版となるが、一点だけダウングレードしている点がある。一般カードは最高3000万円の国内旅行保険が利用付帯となっているが、カード Sでは旅行保険は海外だけが対象となっている。

20%還元のキャンペーンも実施

 一般カードの後継カードという大きな意味を持つカード Sでは、キャンペーンも大型だ。24年3月31日までの間に入会した人を対象に、下記のキャンペーンを実施する。

  • Amazon.co.jp利用で20%還元(最大1万5000円)
  • Apple Pay/Google Pay/MyJCB Pay利用で20%還元(最大3000円)
  • 家族カード入会で4000円キャッシュバック/対象期間の利用でポイント付与2倍
  • 期間中分割・スキップ払い10万円以上で1万5000円キャッシュバック

【お詫びと訂正:2023年12月8日午後1時、J.D.パワーからのコメントを修正しました】

筆者プロフィール:斎藤健二

金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。


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