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「休日対応は一切しません」 つながらない権利を主張する部下とどう向き合う?Q&A 社労士に聞く、現場のギモン

» 2024年01月22日 07時00分 公開
[近藤留美ITmedia]

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連載:Q&A 社労士に聞く、現場のギモン

働き方に対する現場の疑問を、社労士がQ&A形式で回答します。

Q: 営業部で管理職をしています。若手の部下が「勤務時間以外の電話、メールは一切対応しません」といって、勤務時間外の連絡を全く返してくれません。

 社内だけでなく、クライアントからの連絡も返さないようで「退勤後や休日であっても、仕方のない場合もあるのだからできる範囲で対応してほしい」と伝えると、「時間外労働だ」「ハラスメントだ」と反発されました。

 自分の感覚では、退勤後や休日といえど営業ならば連絡を返すのは当たり前のことなので、困惑しています。最近は「つながらない権利」も指摘されていますが、緊急時などはどうしても対応してくれないと、管理職である自分に負担が集中してしまいます。

 どうやって指導していけばいいのでしょうか?

「一切対応しません」 つながらない権利を主張する部下とどう向き合う?

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

A: 業務に重大な支障が出るわけではないのであれば、当該若手社員の「勤務時間以外の電話、メールは一切見ません」という主張は、原則、何ら問題はなく当然のものと言えるのではないでしょうか。

 もちろん、ご相談の内容だけではどのような業種の営業なのか、具体的な業務内容などが分からない、そもそも、本件の勤務時間外の電話やメールの緊急性や業務上の必要性の有無、またその程度については明確には判断できません。

 ただし一般的な営業職は緊急救命やライフラインに関わる業務ではないと考えられるため、本件若手社員も勤務時間以外の電話やメールについて、翌営業日や勤務時間開始後に対応したとしても、本来の業務に重大な支障が出ることはあまり考えられないと思います。

 これまで「会社やクライアントから連絡が来たら勤務時間外でも応答する」ということが会社内で当然のこととして、脈々と受け継がれていたようですと、上司や取引先からの心証が悪くなる可能性はあります。

 ただ「営業ならば連絡を返すのは当たり前」という考えは、ご相談文にもある通りご自身の感覚です。合理性のない自身の感覚や考えを部下に当然として求めるのは、大変危険な行為でもあります。 

 「連絡を返す緊急性もなく、返さなくとも業務に支障が出ないにもかかわらず、退勤後でも休日でも、とにかく対応すべき」という考え方が、サービス残業、ひいては長時間労働を助長する可能性があり、現代社会では、旧態依然の悪しき慣習であるとも考えられるからです。

緊急を要する仕事への対応は?

 一方で、そうは言っても、本当に緊急を要する仕事上の連絡・対応などもあり得ます。

 社内はともかく、クライアントに対しては、対応いかんでは会社の信頼関係、業績に関わってくるということとなると、勤務時間外の迅速な対応も求められるでしょう。

 会社やクライアントからの連絡には、何でもかんでも対応するよう部下に求めるというのではなく、対応しなければ本当に業務に支障が出る場合に限って、対応することを業務の一環として命令することが肝要です。そして、対応してもらった場合には、それに見合った労働の対価を支払うようにする必要があります。

 その場合、あらかじめ就業規則などにも時間外労働の必要性や申請などの具体的な方法についても定めておき、当該労働時間を会社がしっかりと管理することが求められます。

著者:近藤留美 近藤事務所 特定社会保険労務士

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大学卒業後、小売業の会社で販売、接客業に携わる。転職後、結婚を機に退職し、長い間「働く」ことから離れていたが、下の子供の幼稚園入園を機に社会保険労務士の資格を取得し社会復帰を目指す。

平成23年から4年間、千葉と神奈川で労働局雇用均等室(現在の雇用環境均等部)の指導員として勤務し、主にセクハラ、マタハラなどの相談対応業務に従事する。平成27年、社会保険労務士事務所を開業。

現在は、顧問先の労務管理について助言や指導、就業規則等規程の整備、各種関係手続を行っている。

顧問先には、女性の社長や人事労務担当者が多いのも特徴で、育児や家庭、プライベートとの両立を図りながらキャリアアップを目指す同志のような気持ちで、ご相談に乗るよう心がけている。


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