京葉線の「通勤快速廃止」 責任は本当に鉄道会社だけなのか宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/3 ページ)

» 2024年02月02日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

詰めが甘かったJR東日本・千葉支社

 京葉線内での利用実態やデータを見る限り、JRが「混雑の平準化」として、通勤快速の廃止に踏み切ろうとするのも、分からなくはない。

 実は、このダイヤ改正による快速の各駅停車化で、習志野市・船橋市などの臨海部で「乗車可能な列車が約30本増加」するなど、実はそれなりのメリットもあるのだ。しかし、県を挙げた反対運動に発展した背景にあるのは「ほとんどの自治体にとってデメリットしかなかった」ことだろう。

 まず千葉市にとって、市内のほとんどの駅(海浜幕張駅・検見川浜駅・稲毛海岸駅・千葉みなと駅)は、もとより快速の停車駅であるため乗車機会は増加せず、快速の廃止によって所要時間は大幅に増加する。かつ、通勤快速がなくなった時間帯の普通列車増発があるわけでもなく、良いことがないのだ。

 通勤快速に関して房総半島の自治体がほとんど反対に回っているのは先に述べた通り。この状態で千葉市も反対、となると、千葉県としても県を挙げた反対に回らざるを得なかったのではないか。JR東日本も、ここまでの反発を予測できていなかったのだろう。

代わりに早朝特急 問題はあるものの「結構使える?」

 JR東日本・千葉支社は、ダイヤの再度見直しを24年1月に発表した際に「年に一度のダイヤ改正にとらわれず、運行のあり方を柔軟に検討していきたい」とコメント、今後に含みを残している。

 ただ、現在の特急「わかしお4号」が通勤快速と近い時間帯に繰り上げ(勝浦駅午前6時44分発・上総一ノ宮駅午前7時10分発・東京駅午前8時25分着)されており、このあとの通勤快速の復活は難しいかもしれない。

 現状での外房線の朝の特急列車は、午前6時9分茂原駅始発の「わかしお2号」のみ。公言してはいないものの、JRは実質的に「東京方面に急ぐなら、通勤快速より特急わかしおの利用をどうぞ」という施策をとったといえるだろう。

京葉線 東京近郊・各地の「通勤特急」。地理院地図より筆者加筆・加工

 通勤快速の乗客の大半は、割引率5〜8割の通勤・通学定期で乗車しており、JRからすれば「プラスで指定席料金が取れる」、利用者からすれば「通勤での着席が保証される」というメリットがある。

 通勤時間帯の東京方面への列車を特急列車に変更という施策は、東海道線なら「湘南ライナー」から「湘南」、高崎線なら「ホームライナー鴻巣・古河」から「スワローあかぎ」(現在は「あかぎ」)、ほか中央線・青梅線・常磐線などの例もあり、むしろ通勤時間に遠方からの特急列車の設定がない方が珍しい。

 ただ「わかしお4号」の場合は、通勤快速が停車する新木場駅・八丁堀駅に停車しないため地下鉄への乗り換えに使えず、高崎線の「スワローあかぎ」登場時のような割り引きキャンペーンもなし。ただ単に「通勤快速を、割高で使えない特急列車に変えてみただけ」という中途半端な施策でもあり、「商売が下手なのではないか」とさえ感じてしまう。

 ただ、この特急「わかしお4号」は、活用策しだいでは“化ける”かもしれない。都心から距離がある外房線沿線・一宮町以遠のいすみ市・御宿町・勝浦市などは「東京に通勤できる鉄道ダイヤ」をことあるごとに求めており、「わかしお4号」なら勝浦駅を午前6時44分に出て、東京駅に午前8時25分に到着できるのだ。

 外房線の特急「わかしお」の利用は伸び悩み、今回のダイヤ改正で減便、車両の減車も行われる。すでに勝浦市では特急料金の補助を行っており、ほか常磐線の特急「ひたち」による特急通勤を行う茨城県石岡市のような例も。「一定以上の遠距離通勤は特急利用」と割り切って、補助や利用者用駐車場の割引などで、特急「わかしお」の運行を支えた方が良いのではないか。

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