京葉線の「通勤快速廃止」 責任は本当に鉄道会社だけなのか宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(3/3 ページ)

» 2024年02月02日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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各地で起こり得る「鉄道会社の胸三寸」 問われる「普段からの関係」

 今回のケースでは、JR東日本ならびに千葉支社の「通勤快速廃止」という判断に自治体が異議を唱え、騒ぎが広がった。しかし、ダイヤ改正は基本的に鉄道会社の“胸三寸”でもある。

 今回の自治体の対応も「乗車率が7割程度」という現実にほとんど触れず、「鉄道会社の社会的な責任は重い。通勤快速を残せ」という一方的な姿勢が目立つ。そもそも、通勤快速や快速の廃止を防ぎたいのであれば、過去に4本も運行されていた通勤快速が減便になったタイミングで、要因を確認することもできたはずだ。

 こういった鉄道会社との齟齬(そご)を防ぐためにも、普段からの関係の強化は欠かせない。利用促進や情報の共有を目的とした連携は、JR東日本と神奈川県川崎市・栃木県足利市、JR西日本と鳥取県などの事例がある。今回のようなケースでも定期的に情報を交換していれば、千葉市・神谷市長が後から発案したような「通勤快速の乗車率を上げるために、京葉線内の停車駅を増やしては?」といった提案も、事前にできただろう。

京葉線 上総一ノ宮駅で発車を待つ車両

 京葉線の普通列車の増便は昔からおざなりにされる傾向があり、13年に平日朝の快速が各駅停車化された際にも、ラッシュ時の途中駅の停車本数の増加は話題にならず、千葉県議会も「快速廃止反対」一辺倒であった。もし「快速・速達手段の維持」と「普通列車の乗車機会の増加」をどうしても両立させるのであれば、過去に「1100億円の経費がかかる」(2016年6月・千葉県議会)として棚上げとなった一部区間での複々線化や、長年の懸案である「りんかい線直通」による利用客の分散、といった話になってしまう。

 そういった根本的な対策が難しいようであれば、自治体が一方的に「廃止反対」を申し入れるより、「存続には何が必要か、いまの運行体制は今後とも大丈夫か」といった事項を、鉄道会社への他力本願とせず、しっかりヒアリングしておく必要がある。

 28年度までに1000億円の鉄道コスト削減を経営目標に掲げているJR東日本の管内では、特にこういった事態は今後とも起こり得るのではないか。

宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。

また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。

 noteでは過去の執筆記事をまとめている。


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