「シラコンバレー」の異名も 和歌山にIT企業が続々進出、なぜ?未来の商機は地方にあり(1/4 ページ)

» 2024年02月05日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

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 和歌山県に近年、IT企業が相次ぎ進出している。直近の約5年で20社が拠点を設置。「ワーケーションの聖地」としても知られるリゾート地、白浜町は、多くの新興企業が集まる米シリコンバレーになぞらえて「シラコンバレー」との異名も持つようになった。

 企業誘致を本格的に始めた2001年当初は、誘致に成功しても長続きしないケースもあったという。県は過去の反省を生かし、どのように改善を進めていったのか。

和歌山県にIT企業が相次ぎ進出している。写真は和歌山城から見た和歌山市街地(ゲッティイメージズ)

 本州最南端に位置する和歌山県。みかんや梅、柿などの果樹栽培が盛んで、世界遺産の高野山や熊野古道を有するほか、リゾート地の白浜町にはパンダなどを目当てに、毎年多くの観光客が訪れる。

 これまで、大阪府に隣接する和歌山市をはじめとする北部地域では、製造業の誘致が進んできた。県の産業構造を見ると、製造品の出荷額において、鉄鋼、石油、化学などの構成割合が高く、全体の6割を占める。

 世界的にカーボンニュートラル(脱炭素)への関心が高まる中、鉄鋼や石油といったいわゆる「重厚長大産業」から脱皮することが、県にとって喫緊の課題となってきた。

和歌山県の産業は鉄鋼や石油といった「重厚長大産業」の割合が高い(令和3年経済センサスー活動調査、県公式Webサイトより)

 もう一つ、県が危機感を抱いてきたのが、止まらない人口流出だ。県の人口は23年4月1日現在で89万6000人。85年の108万7000人をピークに減少の一途をたどる。とりわけ、若年層の流出が深刻となっており、県内の高校生らが県外に進学する割合は、18年まで41年連続ワースト1位を記録。昨今は、和歌山市への大学誘致などが奏功し、県外進学率は79.7%(22年)まで低下、ワースト1位を脱却している。

49社が集積「シラコンバレー」の異名も

 産業構造の転換や若者の定着のためには、新たな産業や雇用創出が欠かせない。こうした状況を背景に、県は01年から県南部の白浜、田辺地域を「IT企業の集積地にしよう」と構想を立ち上げた。

 これまでに、和歌山市や南紀白浜空港に近い地域を中心に、県内に進出した企業は49社に上っている(24年1月11日現在)。

和歌山県に進出した企業(「アフターコロナ時代のNew Work×Life Style」より)

 とりわけ、顧客情報管理大手のセールスフォース・ドットコムの日本法人が、15年に白浜町にサテライトオフィスを設置したことをきっかけに、多くのIT企業が進出することとなった。

 一方で、県の企業誘致は当初から順風だったわけではない。

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