EVシフトで「トヨタは遅れている」は本当かスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2024年02月07日 08時58分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ディーゼルゲート」からの起死回生

 今でこそ欧州といえば、猫も杓子も「EVシフト」ムードだが、ほんの十数年前までは「EV」なんて誰も見向きもしなかった。環境に優しいクルマといえば、「クリーンディーゼル」だったからだ。

 それまでディーゼルエンジンといえば、黒い噴煙で環境にも悪いイメージがあった。それが、技術力によってさまざまな問題が解消されたことで、VW、BMW、ダイムラーなど欧州メーカーがこぞってクリーンディーゼルを採用、自社の技術力の高さを競うアピール合戦が始まった。

 しかし、そんな時代は長く続かなかった。15年9月、VWのクリーンディーゼル車の排ガス規制プログラムが、試験時だけ規制値内に収まるような設計がなされていたことが発覚。それをきっかけに、BMWやダイムラーでも同じエンジン不正が見つかったのである。いわゆる「ディーゼルゲート」だ。

 これら3社は欧米の規制当局に莫大な罰金・和解金を払った挙げ句、ブランドイメージも地に落ちてしまった。そこで起死回生の策として、VWが打ち出したのが「EVシフト」だったというワケだ。

VWが22年に日本で発売したフル電動SUV新型「ID.4(アイディ フォー)」(出典:プレスリリース)

 ここまで言えば、勘のいい方はお分かりだろう。トヨタグループで続発している「エンジン不正」も基本的な構造は「ディーゼルゲート」と同じだ。日野自動車と豊田自動織機は不正もズバリ、ディーゼルエンジンそのもので、試験中に不正を行って排出ガスの規制を満たしたように偽る構図もディーゼルゲートと丸かぶりだ。一方、ダイハツの不正はディーゼルではないが、排出ガス・燃費試験の時だけ良いデータが検出できるような細工がなされていた。欧州メーカーと基本的な考え方は同じだ。

 つまり、今回のトヨタグループの不正は「日本版ディーゼルゲート」なのだ。ただ、本家と比べると「遅れている」感は否めない。欧州では15年に発覚したが、わが国では22〜23年だ。よく「日本のビジネスは米国に10年遅れている」なんてことが言われるが、自動車ビジネスのトレンドも7〜8年は遅れている印象なのだ。

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