しかも、不正の中身がマズい。欧州メーカーが苦い経験を経て見切りをつけた内燃機関を、トヨタグループが「日本ならではの技術力」と進化させていくこと自体は非常に素晴らしい。が、そこで欧州メーカーと同じようなインチキをしていたことが世界に広まってしまうと、「結局、内燃機関ってインチキしないと環境対応できないのね」というネガイメージが定着してしまう恐れがあるのだ。
ただ、これはあくまでわれわれのような「素人」が感じることであって、「自動車業界のプロ」からすればまったく逆の評価になる。
実は日本の自動車関係者の間では、EVシフトに関しては「失速」「失敗は時間の問題」「既に数字的には失敗」などとかなり否定的に捉えている人が一定数いらっしゃる。彼らはトヨタが掲げる、燃料電池、HEV、PHEV、さらには水素や次世代燃料を用いる方法も模索する、いわゆる「全方位戦略」こそが未来を見据えた正しい選択だと評価している。実際、以下のように「EVシフト一色」の風潮に疑問を投げかけるメディアの論調も増えてきている。
となると当然、今回の「不正」に対する評価も180度変わってくる。「EVシフト」をゴリ押しする欧米中が間違っていて、トヨタの「全方位戦略」が最終的には正しいと証明される――という世界観に基づけば、今回の不正など「大事の前の小事」だろう。
確かにやったことは悪いことだけれど、トヨタが取り組んでいることの重要さを踏まえれば、そこまで叩くような問題ではないという考え方だ。それがよく分かるのが、1月30日、トヨタグループ発祥の地であるトヨタ産業技術記念館での会見を報じたメディアの論調だ。
各社、豊田章男会長が語った「グループ各社が成功体験を重ねていく中で、大切にすべき価値観や物事の優先順位を見失った」という分析や、グループ17社が共通理念を見つめ直すという会長の言葉をストレートに報じている。
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