ただ、この「トヨタ推し」の社会ムードに不安がないわけではない。どう理屈を付けても、世界一の自動車市場である中国で、EVが爆発的に売れているという現実は重い。
にもかかわらず、「中国製EVなど安かろう悪かろう」とか「EVバブルが崩壊して倒産が続出」と日本人が留飲を下げるようなニュースがやたら目立つ。高度経済成長期、日本の自動車が台頭してくると、欧米では「メイド・イン・ジャパンなんて安かろう悪かろうで危なくて乗ってられない」と散々ディスられたが、それと同じことを今度は日本がやっているのだ。こういうムードが高まると、トヨタの「惨敗」もあるのではないかと心配している。
なぜそう感じているのかというと、日本はやたらと「敵」の力を軽視するからだ。
今から20年ほど前、週刊誌や保守系雑誌で「中国経済は大崩壊」「中国のバブルは今年はじける」といった特集をよく目にした。中国経済の成長はすべて虚構であって、貧富の差が拡大しており、不満を持った人々が中国共産党を転覆させるなどと、「クーデター」を望んでいるかのような過激な予測記事も多くあった。
しかし、あれから20年が経過してどうなったか。北京や上海はすさまじく発展している。日本を訪れる中国人富裕層たちの購買力で、国内のインバウンド消費は支えられている。もちろん貧富の差はあるが、日本へ来る中国人留学生の中にはタワーマンションに住んで、親から月50万円の生活費をもらっている人もいる。
「成長著しい中国」という現実から目を背け続け、中国企業の技術や市場のポテンシャルを見くびっているうちに、気が付いたら国際社会の発言力や経済成長など、さまざまな分野で「惨敗」してしまっているのだ。
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