臨海部と東京駅を“ボーン”とつなぐ「新地下鉄」 なぜ運営が「りんかい線」事業者に?宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(4/4 ページ)

» 2024年02月15日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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東京都の「鉄道建設マシマシセット」 実現なるか

 東京臨海高速鉄道は、コロナ禍前の18年には200億円近い運賃収入を確保し、建設費用の償還を進めながら37億円の純利益をたたき出している。このペースだと10年ほどで債務を完済している可能性が高く、臨海地下鉄が開業する40年頃には、優良企業に変貌を遂げているだろう。

 臨海地下鉄の概算事業費は、約4200億〜5100億円程度。工事や施設保有をJRTTが請け負い、事業者(東京臨海高速鉄道)が線路使用料を払う枠組み(東急・相鉄新横浜線と同様)となるだろう。臨海地下鉄の運営を担うだけの資質は、十分にある。

「東京BRT」車両。臨海地下鉄に近い場所を走っている

 ただ、問題は東京都側にある。臨海地下鉄に加えて「りんかい線・羽田空港アクセス鉄道への接続部」「つくばエクスプレス・秋葉原駅〜東京駅延伸」「つくばエクスプレス仕様の車両(交直流車)増備・8両化」「羽田空港駅の折り返し設備増強」など……提唱している構想、必要となってくる事項を全て推進すると、事業費1兆円の大台に届きかねない。

 今後も人口増加が見込める、伸び代たっぷりな東京都中央区ならではの“鉄道マシマシセット”状態といえるだろう。計画を全て実現するには、東京都だけでなく、国土交通省の後押しをどこまで得られるかも、重要となってくる。

 また、マシマシセット整備が実現したとしても、現在の「りんかい線」のように、利用者が割高な運賃を支払う状態であれば、効果は薄れてしまう。利用者の負担が少ないように、なるだけ割増運賃がないようにしてほしいものだ。

宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。

また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。

 noteでは過去の執筆記事をまとめている。


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