臨海部と東京駅を“ボーン”とつなぐ「新地下鉄」 なぜ運営が「りんかい線」事業者に?宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(1/4 ページ)

» 2024年02月15日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

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宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:

乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。


 東京都が建設の準備を進めていた「都心・臨海地下鉄新線」(東京駅〜有明・東京ビッグサイト駅(仮)間・6.1キロ、以下:「臨海地下鉄」)の事業者として、「りんかい線」を運営する東京臨海高速鉄道が選定される見通しだ。

 2月2日の定例記者会見で、小池百合子東京都知事が明らかにしたところによると、建設を担う「整備主体」は鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)、営業主体は東京臨海高速鉄道。これに東京都を加えた3者の枠組みで臨海地下鉄整備への検討を行うことを、すでに同意しているという。

 臨海地下鉄の沿線となる晴海地区では、2021年に開催された東京オリンピックの選手村跡地が、タワーマンションが立ち並ぶ住宅街「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ)に変貌を遂げた。また、24年2月に開業した豊洲卸売市場前の集客施設「豊洲 千客万来」では、年間260万人の来客を見込んでいるという。新銀座・新築地・勝どき・晴海・豊洲市場(全て仮称)といった新駅の周辺エリアはまだ未利用の土地も多く、いわば臨海地下鉄の沿線は、都内では貴重な「伸び代たっぷり」なエリアであるといえるだろう。

【お詫びと訂正:2024年2月27日午後1時 「豊洲 千客万来」の開業日を誤って表記しておりました。お詫びして訂正いたします。】

都心部・臨海地下鉄の概要(東京都中央区資料より)

 いま東京駅エリアから臨海部の晴海・豊洲・お台場には、鉄道なら「ゆりかもめ」「りんかい線」、バスなら「東京BRT」などへの乗り換えが必要となる。もし臨海地下鉄が開業すれば、東京駅から各エリアは15分圏内、直通で移動できる見込みだ。

 将来的には羽田空港への連絡も視野に入れているといい、海外からのインバウンド(訪日観光客)やMICE(ビジネスイベント)を直接呼び込む手段としても期待できそうだ。

 定例会見で小池知事は、臨海地下鉄について「都の中心地(東京駅エリア)にボーンとつなぐ手段」「臨海部の背骨としての役割を期待する」と、独特の言い回しで期待を寄せた。

 この伸び代たっぷりな臨海地下鉄の事業主体として、なぜ東京臨海高速鉄道が浮上したのか。まずは同社とりんかい線の現状を見てみよう。

実は、りんかい線は「東京都のモノ」

 まず、東京臨海高速鉄道、ならびに同社が保有する鉄道路線「りんかい線」の現状について触れておこう。

 東京臨海高速鉄道が線路・車両などの設備を保有するりんかい線(新木場駅〜国際展示場前駅〜大崎駅、12.2キロ)は、JR川越線・埼京線などからの直通電車が乗り入れ、大崎駅で同社の乗務員に交代するような形で運行している。

「りんかい線」路線図。りんかい線ホームページより

 同社所有の車両(70-000形)はJRの209系車両とほぼ同様の見かけでパッと判別がつかないが、JR東日本とりんかい線は基本的に別会社の路線だ。なお、東京臨海高速鉄道は第3セクター会社であり、株主の構成は東京都が91.32%、JR東日本の持ち分は2.41%に過ぎない。

 今のところ、両社の関係は「相互乗り入れでJR東日本とは協力関係にあるが、りんかい線は基本的に東京都のモノ」。今後の行く末を占う上で、この関係性は重要となってくる。

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