臨海部と東京駅を“ボーン”とつなぐ「新地下鉄」 なぜ運営が「りんかい線」事業者に?宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/4 ページ)

» 2024年02月15日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

なぜ「東京臨海高速鉄道」が選ばれたのか

 いまの臨海地下鉄構想は、11年に中央区が提案したLRT・BRT導入プランから始まり、東京都の参加、東京五輪の開催決定などを受けて、地下鉄の整備へと変化していった。

 臨海地下鉄としての単独区間は全長6.1キロ、ほぼ初乗り運賃しか徴収できず、採算性を考えると単独路線としての開業や、東京メトロ・都営地下鉄の既存路線から分岐させることも難しい。また、JR東日本は現時点で羽田空港アクセス線・東山手ルート(東京駅〜田町付近〜羽田空港間。31年度開業予定)にかかりきりで、りんかい線と同様に運賃区間が複雑になる「同一区間・別経路」をすんなり受け入れるとは考えづらい。

 この鉄道計画は「他エリアから臨海部へ人を呼び込む」という目的もあり、課題は「直通運転の相手確保」ならびに、全区間が都心近くであるが故の「車庫・整備拠点の確保」であった。

 この環境の中で、直通相手は「つくばエクスプレス」(首都圏新都市鉄道、以下「TX」)秋葉原駅〜東京駅間を延伸した上での直通が検討されていた。実現すれば茨城県守谷市・つくばみらい市にある車両基地の活用もできる。さらに、直近では23年2月にTV沿線の自治体9区市(茨城県つくば市・流山市、東京都足立区など)がTX延伸・臨海地下鉄への直通に関する要望書を提出するなど、積極的に支える姿勢を見せている。

 しかし肝心のTXが、コロナ禍で20年度・21年度に赤字転落。その後もなかなか勢いを取り戻せず、秋葉原駅〜東京駅間の延伸も「慎重にならざるを得ない」という姿勢に転じたままだ。かつ、TXは途中で直流区間から交流区間に入るため、乗り入れが実現したとしても「コストの高い交直流電車の製造か、乗り入れ全便を守谷止まりにするか」という選択肢を迫られてしまう。

東京臨海高速鉄道(りんかい線)八潮車両基地

 もし、臨海地下鉄とりんかい線を一体運営することができれば、既に開発の波が押し寄せている晴海・勝どきに車庫を構えずとも、品川区八潮にある「りんかい線」車両基地を活用できる。何より、東京臨海高速鉄道は株式の9割を東京都が握る、いわば“都のモノ”であり、何かと融通も聞きやすい。

 こうなると臨海地下鉄は、りんかい線ともども東京臨海高速鉄道に運営をお願いして、将来的にはTXの乗り入れ待ち……という形態が、一番収まりがつきそうだ。

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