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今さら聞けない「春闘」とは 給料が上がる? 社労士が分かりやすく解説(2/3 ページ)

» 2024年02月15日 08時30分 公開

春闘の流れと最近の動き

 春闘は「全国中央組織」をトップとする、大きなピラミッド構造の組織により行われます。

春闘の組織図(画像:筆者作成)

 トップとなる全国中央組織はいくつかありますが、有名なところは以下の3組織です。

名称 組合員数(令和4年労働組合基礎調査の概況)
日本労働組合総連合会(連合) 683万7000人
全国労働組合総連合(全労連) 47万7000人
全国労働組合連絡協議会(全労協) 8万2000人

 全国中央組織は、労使交渉に加え、制度や法律の改正など政治の力も重要との立場から特定の政党を支援し、また国会議員を送り込むなどの政治活動も行っています。

 傘下になる「産業別組織」は同一の産業の労働者あるいは労働組合が結成した組織、「企業別労働組合」は企業を単位としてその企業の従業員が結成した組織です。

 春闘で会社側と交渉するのは「企業別労働組合」です。「全国中央組織」や「産業別組織」の指導・調整の下に、会社に賃金引き上げなどを中心とする要求を提出し団体交渉を行います。

 よって、「企業別労働組合」がない企業では、組織立った春闘が行われることがありません。これが、中小企業に勤める方にとって春闘のイメージが湧かない理由の一つです。

 厚生労働省の「令和4年労働組合基礎調査の概況」においても雇用者数のうち、労働組合員数は16.5%と年々低下していますので、ニュースでしか見聞きすることがない人も少なくないでしょう。

 また、その交渉もかつてのようにストライキが頻繁に行われることもなく穏やかなものになっています。

労働争議件数の推移(画像:労働政策研究・研究機構「労働争議」より)

 春闘で大きなテーマとなるものが「ベア」で、これはベースアップの略です。

 ベアは賃金テーブルそのものを上昇させるので将来の定期昇給にもプラスに働きます。そのため、労働組合にとっても企業にとっても重要です。「全国中央組織」である「連合」は、2024年の春闘でベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求する方針を決めました。

 景気低迷とデフレが長期化する中で具体的な要求水準を掲げない時期が続きましたが、近年は数値設定を行っています。5%以上の設定は1995年以来、およそ30年ぶりの水準で、最近の物価高が背景にあるのが読み取れます。

春闘での要求ベア率(画像:筆者作成)

 労働組合に合わせて、政府もデフレからの脱却を目指して、給料が上がれば、消費も拡大し、企業の業績も上向くというストーリーの基で、経済界に対して賃上げの要請をしており「官製春闘」という言葉も生まれました。

 これらの要求に呼応するように、厚生労働省の発表によると資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合がある企業の賃上げ率は上昇傾向にあります。

賃上げ率(画像:筆者作成)

 また今日では賃金だけでなく、ワーク・ライフ・バランス実現に向けた労働時間短縮や育児・介護をしながらでも働きやすい仕組みづくりなども重要なテーマとなり、また交渉の範囲も正社員だけでなく、非正規社員にまで広がるなど交渉内容は年々、多様化・複雑化しています。

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