入社時にあった退職金制度が廃止や見直しになる。長く働く上で起こり得ることですが、それを期待して入社した労働者としては話が違うと怒りたくなります。
今回は、退職金制度の法的な位置付けや企業側が気を付けるべき変更・廃止の手続きはもちろん、実際に入社後に退職金制度が廃止され、裁判に発展したケースも紹介します。
退職金制度とは、一定期間働いて退職する従業員に対して、働いた年数や在職期間中の功績などに応じて会社がまとまったお金を支給する制度のことです。ちなみに退職金制度を規制する法律は存在しませんので退職金制度の有無、何年目から支給するか、どんな計算方法を用いるか、財源の確保の方法などは各社が自由に決められます。
「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%となっています。企業規模別に見ると「1000人以上」が90.1%、「300〜999人」が88.8%、「100〜299人」が84.7%、「30〜99人」が70.1%となっており、大手ほど導入されています。
退職金は、退職一時金制度と退職年金制度に大きく二分され、その中にいくつかの種類があります。それぞれ特徴があり、複数の制度を組み合わせて運用される場合もありますから、企業規模や自社の退職金制度に照らして最適な制度を検討すると良いでしょう。
退職一時金制度 | 概要 |
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社内準備 | 内部保留や保険などを原資にするので自由に設計、運用できます。 |
中小企業退職金共済制度 | 独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営する制度で導入が容易で利回りが約束されます。 |
特定退職金共済制度 | 上記の中小企業退職金共済制度とほぼ同じで、商工会や一般社団法人などが、所轄税務署長の承認を受けて運営します。 |
退職年金制度 | 概要 |
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確定給付企業年金 | あらかじめ企業と従業員が給付内容や将来の受給額を約束する制度のため、従業員の安心感が大きいです。 |
確定拠出年金 | 会社が積み立てた掛金を従業員が運用する制度で最終の退職金額に会社は責任を負いません。 |
なお導入の有無も含めて、会社の広い裁量が認められる退職金制度ですが、一度ルールとして定めた場合は労働契約の一部となるので、労働者にとっては権利、会社にとって義務となります。よって安易に見直しや廃止をすることはできず、一定の手続きが必要になります。
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