売れ続けるマツダ「ロードスター」 あえてフルモデルチェンジしない理由鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)

» 2024年02月21日 08時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]
前のページへ 1|2|3       

見た目はほぼ同じ、でも確実に高くなった商品力

 一方、デザインの変更はごくわずかなものでした。ヘッドライトなどの灯火系がLED化されたのと、ホイールのデザインが変わった程度。その他、ボディーカラーに新色「エアログレーメタリック」を追加しました。また、限定車「990S」が廃止され、上質さをうたう新グレード「S Leather Package V Selection」が追加されています。価格も全体として20万円ほどアップし、289万8500〜367万9500円となりました。

star デザインの変更はごくわずか(プレスリリースより引用)

 実際に乗ってみると、ハンドルを切った時のフリクション(抵抗)が小さくなっており、すっと切れるようになっていました。モニターが大きくなったり、ヘッドライトがLEDになったりと、使い勝手も良くなっています。しっかり考え抜いて改良されており、商品力が確実に高くなっていることが分かりました。

star 実際の乗り心地は……? (プレスリリースより引用)

なぜ今回の大型アップデートを実施したのか

 一般的に、クルマは発売から6年ほどでフルモデルチェンジすると言われています。ロードスターの現行型は、前回のフルモデルチェンジから約9年が経過した、いわばモデル末期です。つまり、マツダはいつ世代交代してもおかしくないクルマに、予算を投入して大幅な商品改良をしたことになります。

 その上デザインの変更はごくわずかで、見た目はさほど変わっていません。今回の商品改良により、「ロードスターが一段と売れるようになる」とは言い難いのが正直なところです。では、なぜマツダはロードスターを商品改良したのでしょうか? 

star なぜ今回の大型アップデートを実施したのか(プレスリリースより引用)

 今、自動車業界は、電動化に揺れ動いているまっただ中です。その不安定な中で、次世代のロードスターの開発は難しいもの。自動車業界が次にどの方向に向かうのかしっかりと定まらない限り、次世代のロードスターは出てこない、つまりフルモデルチェンジは難しいのが現状です。

 先行きが見通せない中、今回の改良があったことで、現行型ロードスターの商品的な寿命は確実に延長されました。この先、3年や5年といった長い目で見た売れ行きを考えると、今回の商品改良がプラスになるのは間違いないはずです。

star 現行型ロードスターの商品的な寿命は確実に延長(プレスリリースより引用)

 ちなみに、24年はロードスター誕生から35年目。過去、ロードスターは10周年、20周年、25周年、30周年と特別仕様の記念車が発売されています。記念車は台数限定で、専用のボディーカラーに身を包んだクルマがほとんどでした。通常通りいけば、35周年記念車の登場の可能性は非常に高いと言えます。マツダの動向に注目です。

star 30周年記念車(プレスリリースより引用)

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.