「株価がバブル超え!」と騒いでいるうちは、日本経済が上向かないワケスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2024年02月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本企業のほとんどが低賃金のまま

 本連載では3年以上前から繰り返し、しつこいくらいに述べてきたことがある。社会保険料が高いとか、円安がどうとかいう以前に、日本企業の99.7%を占める中小企業の給与が常軌を逸した低賃金だからだ。

 特に低賃金なのは、日本企業の7割を占める小規模事業者だ。これは「製造業その他」の場合、従業員20人以下。「商業・サービス業」の場合は従業員5人以下。要するに、家族で経営している「個人商店」がこの30年間ずっと従業員の給料を上げることができなかった。

 GDPの7割にも及ぶ個人消費が冷え込んで、気がつけば「安くてうまい」「コスパ重視」がすべてにおいて重要視される。底なしのデフレスパイラルへと転落したというワケだ。

 こうした構造不況の中で、企業のわずか0.3%に過ぎない「大企業」の株価がバブル超えをしようが、春闘で賃金が上がろうが、日本経済全体はそれほど大きな影響はない。企業の99.7%を占めて労働者の7割が働く中小企業は、大企業の株高で業績が上がるわけではないし、春闘で賃上げをするわけでもないからだ。そもそも、経営者に対して労働者の待遇改善や賃上げを迫る「労働組合」自体が存在しない。

 厚生労働省が発表している「令和4年労働組合基礎調査の概況」の企業規模別(民営企業)労働組合員数および推定組織率(単位労働組合)を見ると、「小規模事業者」に当たる企業規模「99人から29人以下」の労組推定組織率は0.8%しかない。「中堅企業」に該当する「999人から100人」でも同10.5%にとどまっている。

企業規模別労働組合員数及および推定組織率(出典:厚生労働省)

 つまり、トヨタ労組がどれほどベアを獲得しようとも、社長を含めて従業員が10人といった「個人商店」からすれば、「別世界」の話なのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.