同じことが中小企業経営者にもいえる。実はこれまで国は「賃上げしやすい環境づくり」を掲げて、中小企業に莫大な補助金をバラまいてきた。しかし、政党交付金と同様に「結果」に結びついていない。
なぜかというと、先ほどの政治家と同じだ。競争力もなく、資金繰りに悩んでいるような中小企業にとって、カネはいくらあっても足りない。だから、賃上げ名目で補助金を受け取っても、会社を存続させるための「運転資金」に当ててしまうのだ。
「賃上げしやすい環境づくり」は「政治家が不正しない環境づくり」と同じで、「性善説」に基づいている。これくらい税金でサポートしてやれば当然、賃上げをするだろう。そんな「素直な経営者」を念頭に置いている。
しかし、日本の中小企業は約370万社もある。ベンチャースピリッツにあふれて商品開発や事業拡大をしている中小企業もあれば、家族が食べていくだけで精いっぱいで、補助金がなければ廃業みたいな零細事業者もある。
後者のような企業に対して、「環境づくりをするから賃上げをして」とお願いしたところで「はい、やりますよ」と適当にあしらわれるのがオチだ。ましてや日本の中小企業は7割が「赤字」といわれているのだ。
そういうカオスの状況の中で、確実かつ平等に賃上げを実行していくには、ボトムラインを一律で引き上げる。つまり最低賃金の引き上げがベストだと思うが、先ほど述べたように、日本では不可能だ。
そこで予想されるのが「増税」だ。これまで説明したように「中小企業が賃上げしやすい環境づくり」は、どれほど血税を注ぎ込んでも結果が出ない。しかし、それでも続けないといけないので財政が厳しくなる。となると、残るはわれわれ国民が負担をするしかない。
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