「株価がバブル超え!」と騒いでいるうちは、日本経済が上向かないワケスピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2024年02月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「30年賃金が上がっていない」事実

 「大企業が賃上げをすれば、消費が刺激されて国内の景気が良くなることも分からないのか! 義務教育からやり直せ」というお叱りが四方八方から飛んできそうだが、残念ながらそれも「幻想」に過ぎない。

 よく給料の上がった大企業社員が、たくさんのお金を使えばそれなりに景気が良くなる、といういわゆる「シャワー効果」を主張する人も多い。しかし、大企業社員は日本の労働者の3割に過ぎない。これらの人々がこれまでよりもちょっぴり多く消費をしたくらいで国内の景気が良くなって、残りの7割の労働者の賃金まで上がるというのは、さすがに経済をナメすぎだ。

賃上げは一部の労働者のみ(出典:ゲッティイメージズ)

 そもそも、これがご都合主義的な幻想だということは「中小企業は30年も賃金が上がっていない」事実が証明している。

 実は「失われた30年」の間も、「春闘」を迎えるたびにマスコミが大騒ぎをするので、大企業はなんやかんやと賃上げを続けてきた。にもかかわらず、7割の中小企業労働者はビタッと低賃金が固定化されている。これはつまり、「大企業が賃上げをすると中小企業にも賃上げの動きが波及していく」というシャワー効果が机上の空論に過ぎないということだ。

 むしろ、何かとつけて「株価だ」「春闘だ」と全体の0.3%に過ぎない大企業だけをチヤホヤしてきたことが、もはや日本名物といっても差し支えない「低賃金重労働」を固定化させたきた側面もある。

日本企業の給与がなかなか上がらない(出典:厚生労働省)

 大企業の春闘のたびに賃上げに踏み切るのは結構な話だが、そうなると大企業としては人件費が増えるわけだ。その分、利益を上げなくてはいけない。持続的に成長している大企業はいいが、国内だけで事業をしているようなところは厳しい。ご存じのように今、日本は急速に人口が減っており、あらゆる市場がシュリンクしているからだ。

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