「株価がバブル超え!」と騒いでいるうちは、日本経済が上向かないワケスピン経済の歩き方(5/7 ページ)

» 2024年02月21日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

定番の失敗パターンを繰り返すのか

 その代わりに最有力とされているのが「賃上げしやすい環境づくり」だ。賃上げをした中小企業に税制面で優遇策を設けたりして、とにかく企業が自主的に賃上げしやすい環境整備をすべきだというのだ。

 「いいじゃないか! 高すぎる税金をチャラにすれば中小企業だってバンバン賃上げするぞ」という声が聞こえてきそうだが、現実はそんなに甘くない。実はこの「環境づくり」というのは「ふわっ」とした政策を好む日本では定番中の定番なのだが、国民の血税をジャブジャブ費やす割にはほとんど結果がでない「愚策」なのだ。

 中でも分かりやすい例が、「政治家が不正しない環境づくり」だ。

 今から約30年前、リクルート事件や東京佐川急便事件など「政治とカネ」の問題が続いたことで、政治改革が叫ばれた。普通に考えたら、法律を改正して政治家の不正を取り締まるような制度を作って厳罰化すべきだが、政治家自身がいろいろと屁理屈をつけて、世界でもかなりユニークな主張を始める。

繰り返す「政治とカネ」の問題(画像はイメージ)

 「政治家がカネで問題を起こすのはカネに困っているからだ。国民がコーヒー1杯我慢するつもりで税金で政治家を支えてやって、カネの心配がなくなるような環境づくりをすれば、クリーンな政治が実現できる」

 旧ソ連や中国のような共産主義よりも共産主義らしいロジックだが、当時の日本国民は「確かに言われてみれば一理ある」とあっさりだまされて、自分たちの血税を政治家に差し出した。それが現在、政党に配られている315億円にも及ぶ「政党交付金」である。

 この「政治家が不正しない環境づくり」が大失敗だということは、今の裏金や不記載問題を見れば明らかだ。高い給料と政治活動費を税金からもらっているにもかかわらず、「国会議員」という身分を守るためには、選挙で勝つにはカネはいくらあっても足りない。つまり、政治家がよくいう「政治にカネがかかる」ではなく、「政治家という特権階級にしがみつくのにカネがかかる」のだ。こういうセコい「保身」の動きは、どんなに「環境づくり」をしても防げるものではない。

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