なぜ給与が上がらないのか? 残念な“ハリボテ経営者”に4つの特徴あり高賃金化(3/5 ページ)

» 2024年02月22日 08時30分 公開
[田尻望ITmedia]

(2)「他責思考」で、経営の根幹を人任せにしている

 自分以外の人や状況に責任があると考える「他責」の意識は、その人のちょっとした言葉に出てきます。

 私はクライアント企業候補の経営者にヒアリングするとき、最初にさまざまな質問を投げかけます。そのとき、経営の本質的な部分に関わらないことであれば、「たぶん担当部署で、こんな感じでやっていると思いますよ」という回答でも大丈夫です。

 しかし、商品企画やマーケティングのような、会社全体の業績、経営の根幹に直接的に関わることについて尋ねたときにも、「それはマーケティングの部署に任せているので、私はよくわかりませんね」と答える経営者がいます。

 こちらとしては「え、あなたは経営者ではないのですか?」と思うのですが、意外にそういう他責思考の経営者が多くいます。会社が成長するためには、マーケティングとイノベーションはその根幹であるにもかかわらず、自社のマーケティング戦略や、どのような施策を展開しているのかを知らないのは、経営者としてかなり深刻な問題です。

 会社にとって最も重要なことに対して他人事のスタンスでいる時点で、「会社のことを真剣に考えていない社長」「他責思考の経営者」であるということがわかってしまいます。経営において本当に大事な部分に対して他責状態なのだとしたら、それは会社のトップとして組織をグリップできていないということでもあり、その会社は絶対にうまくいきません。

国内企業の優れた経営者のひとり、ファーストリテイリングの柳井正さん(現・会長兼CEO、出典:ゲッティイメージズ)

 最近の国内企業の優れた経営者トップ3といえば、ソフトバンクグループの孫正義さん、ファーストリテイリングの柳井正さん、ニデックの永守重信さんあたりの名前が挙がるでしょう。3人とも常に厳しいことを言っていますが、タフ・エンパシー(厳しい思いやり)を持ち、リストラもせず、しっかりと社員の給与も上げています。もちろん、マーケティング戦略など経営の根幹部分は人任せにせず、自ら責任を負っています。

 彼らのことを悪く言う経営者もいますが、そうした人たちには、おそらく孫さんや柳井さんのような経営ができる自信がないのです。口では立派なことを言いますが、会社の業績は上がらず、社員が大事だと言いながら平気でリストラをし、給与を下げたり賞与を出さなかったりと、同じ経営者でも大きな違いがあります。

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