なぜ給与が上がらないのか? 残念な“ハリボテ経営者”に4つの特徴あり高賃金化(4/5 ページ)

» 2024年02月22日 08時30分 公開
[田尻望ITmedia]

(3)自分自身も会社も「もっと成長しよう」と思わない

 「去年よりも今年、今年よりも来年はもっと人間として、経営者として成長しよう!」という意識を持っていない人は、「ハリボテ経営者」の可能性が高いと言えます。

 なぜなら、「経営者の器=会社の器」だからです。一人の人間として、経営者として大きな器を持たなければ、会社を大きく成長させることはできません。自分よりも賢い人、能力の高い人を周りに集めたアンドリュー・カーネギーは、とても大きな器を持っていました。だからこそ経営者として成功できたのです。また、個人としてのみならず、「会社をもっと成長させよう」「会社の規模をもっと拡大しよう」と思わない経営者も問題です。

 ときどき、「これくらいの年商で、うちはもう十分ですよ」と言う経営者がいます。それで社員に十分な給与を払えて、なおかつ毎年給与を上げられていたらいいでしょう。しかしそうでないなら、その人は「ハリボテ経営者」であると言わざるをえません。

(出典:ゲッティイメージズ)

 例えば年商が50億円で従業員が500人いる会社があるとしましょう。社員の平均年収はおそらく400万円前後といった感じで、決して十分とは言えません。年商50億円なら、営業利益は3億円から5億円でしょう。

 その状態で全社員の年間給与を、100万円アップしたらどうなるでしょう? 100万円×500人=5億円ですから、それだけ給与を上げたら会社は立ち行かなくなります。つまり、その状態で、「これくらいでいい」と言っていたのでは経営者として未来が見えてないと言えてしまうのです。

 20代で独身なら年収400万円でもいいかもしれません。しかし、30代、40代になって、さらに家庭を持っても同じ金額で満足な生活ができるでしょうか。社員は「せめて10年後には年収を100万円上げたい」と思うでしょうし、経営者にも「それくらいは賃金アップしていこう」という気概が必要です。そういう思考を持たない経営者は、自社と社員の「今」しか見ておらず、「5年後、10年後の社員やその家族の生活」のことを考えていないのです。

 社員の給与が上がっていくことは、「1人1時間あたりの付加価値生産性」が上がっていくことです。それが上がれば、必然的に会社の規模や生産性が拡大していきます。逆に言えば、粗利益の規模、利益の規模が拡大していかなければ、給与は上げられません。にもかかわらず、年商がある程度の規模にまで拡大したとき、「もうこれくらいで十分ですよ」と言ってしまうのは、「社員の給与も、これくらいで十分です」と言っているのと同じです。

 そんな経営者の下にいては、社員の給与は場合によっては下がりこそすれ、絶対に上がることはありません。

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