なぜ給与が上がらないのか? 残念な“ハリボテ経営者”に4つの特徴あり高賃金化(5/5 ページ)

» 2024年02月22日 08時30分 公開
[田尻望ITmedia]
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高賃金化 会社の収益を最大化し、社員の給与をどう上げるか?』(田尻望/クロスメディア・パブリッシング〈インプレス〉)

(4)ビジョンと経営戦略を持っていない

 経営者の質をはかる基準の一つとして、「会社の将来に対する、明確なビジョンを持っているか」があります。しかし、どんなに明確で立派なビジョンを持っていても、そのビジョンを実現するための経営戦略や知識がなく、しかも行動や成果が伴わないなら「ハリボテ経営者」になってしまいます。

 戦略がなく、経営に関する知識に乏しい経営者でも、強いビジョンを全面に打ち出せば、ある一定レベルまでの企業規模拡大は、気合いで達成できるかもしれません。しかし、どこかで拡大はストップします。

 例えば飲食チェーン店を新規開業して、「みんな頑張るぞ! 目指せ100店舗!」と言っていても、気合いでいけるのは、せいぜい20〜30店舗、年商20億円から30億円程度でしょう。

ビジョンと経営戦略が一体となったときに、初めて大きな力を発揮します。ビジョンだけだと大きな事業拡大は望めませんし、ビジョンがなく経営戦略だけで突き進んでも、誰もついてこなくなってしまいます。両方がそろっている組織が強いのです。

 ビジョンと経営戦略を持っていない経営者の会社が、毎年のように事業規模を拡大し、利益を上げ続け、成長し続けることは非常に困難です。そのような経営者の下にいて、どんなに頑張って働き続けても、あなたの給与が上がることはないのです。

 このパターンのときには一点だけチャンスがあります。前述した(1)〜(3)のチェックポイントは超えてきて、ビジョンはある。しかし、経営戦略(知識・能力)がない・足りない場合です。あなたがその経営戦略立案と実行を支援できたときには、あなたは経営幹部として昇格し、高賃金化を果たす会社の一翼を担える可能性があります。

 以上が、社員が必死に働いているにもかかわらず、給与を上げようとしない(または、上げられない)「ハリボテ経営者」の特徴、チェックポイントです。

 みなさんが給与をもらって働く立場なら、ここで解説したポイントで、あなたの会社の経営者をチェックしてみてください。また、あなたが経営者なら、「自分はハリボテ経営者になっていないか」を改めて確認してみましょう。

 非常に残念なことですが、ここで挙げたような特徴を持つ経営者は、今の日本を見渡すと山のように存在します。いつまでたっても日本の会社の給与が上がらない、という根本的な問題解決のためには、経営者も社員も、まずそうした事実を改めて認識することが重要です。

この記事は、『高賃金化 会社の収益を最大化し、社員の給与をどう上げるか?』(田尻望/クロスメディア・パブリッシング〈インプレス〉)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


著者プロフィール:田尻望(たじり・のぞむ)

 株式会社カクシン 代表取締役CEO

 京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。

 大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という価値主義経営の哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズまでを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。

 その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜4000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。

 著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)、『キーエンス思考×ChatGPT時代の付加価値仕事術』(日経BP社)、『付加価値のつくりかた』『再現性の塊』(かんき出版)がある。


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