「長崎マリオットホテル」現地を取材 どんな戦略でお客を集めるのか国内9番目(5/5 ページ)

» 2024年02月26日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]
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長崎単独ではなく、「九州」を売りたい

 日本政府観光局(JNTO)によれば、23年の訪日外客数は2500万人を突破し、19年比で78.6%まで回復している。長崎もインバウンド需要の回復が見込まれていて、筆者が長崎(島原半島と長崎市内)に滞在した3泊4日の間にも、アジアを中心に訪日観光客をたびたび目にした。

長崎市内だけでなく、市内から距離のある島原半島でもちらほらと訪日観光客を見かけた

 とはいえ、今の長崎が訪日観光客を引き付けているかといえば、断言できないのが現状だ。

 「10%を超えていた19年の長崎のインバウンドシェア(観光客数における訪日外客数の割合)が一つのベンチマークで、もう少し回復させたいところです。県全体でインバウンド需要を増やそうと施策を打っているので、訪日観光客が増えるのは自然な流れであり、当社もその波に乗りたいと考えています」(窪田氏)

 長崎県では、さまざまなインバウンド施策を実行している。教育や文化観光を軸とした周遊ツアーの提案したり、周遊パスなどの企画乗車券を販売したり、クルーズ客船の誘致したり。自社で長崎観光の魅力を押し出すにあたり、窪田氏は「長崎だけを売りにするのは難しいだろう」との考えを示した。

 「インバウンドセールスの戦略としては、長崎だけをアピールするより『九州』として売ったほうがインパクトにつながるのではないかと。例えば、大分では福岡と組んで周遊をお得に回れるキャンペーンなどを実施しています(※)。長崎も同様のことができると考えています」(窪田氏)

(※)福岡・大分両県とJRグループは、24年4〜6月にかけて「福岡・大分ディスティネーションキャンペーン」の開催を予定しており、先行プロモーションやお得な切符の発売などをしている。

白を基調とした長崎マリオットホテルのロビー

 「施設そのものは非常に良いものができあがったと考えています。市内には新たな駅ビルや出島メッセ長崎、さまざまなホテルが誕生するなど、長崎全体として来訪者を受け入れる体制が整いつつあります。これらの魅力をどうアピールしていくかは課題であり、行政をはじめ地元の企業とも協業していかなければなりません」(窪田氏)

 長崎市では、ジャパネットグループが主導する長崎スタジアムシティが24年秋に開業予定だ。スタジアムを中心にオフィスやホテルも備える同施設は、長崎マリオットホテルからすると競合ともいえるが、窪田氏は「まずは長崎に人を呼び込むのが先であり、地元の盛り上がりをポジティブにとらえている」と話した。

 同ホテルを成功に導くための課題をJR九州にも尋ねると、「地方都市において安定した集客は、容易ではありません。グローバルスタンダードの安心感にローカルな魅力を備えたホテルを目指し、さまざまな企画や発信を続けていく必要があります」とコメントした。

 長崎マリオットホテルの登場により長崎の観光産業にどんな経済効果が現れるのか、注目したい。

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