リテール大革命

「そごう・西武」アジアに増える巨大店舗 大苦戦する国内と何が違うのか?(4/5 ページ)

» 2024年02月26日 07時30分 公開

アジアで増える「そごう・西武」の共通点は?

 ここまで読んで気付いた人もいるであろうが、現在海外で「そごう」として運営される百貨店は、全て現地法人が「そごう・西武」のライセンスを受けて運営している、いわゆるフランチャイズ店舗だ。

 そごうを日本国外でFC展開する企業は、24年時点で「遠東そごう(太平洋そごう)」(台湾)、「廣三そごう」(台湾・台中市)、「香港そごう」(香港)、「インドネシアそごう」(インドネシア)、「クアラルンプールそごう(マレーシアそごう)」(マレーシア)の4カ国5社。また、西武百貨店をFC展開する企業は「インドネシア西武」、そして23年に1号店が開業したばかりの「マレーシア西武」の2カ国2社がある。これら海外でそごう・西武をFC展開する7社は、いずれも過去5年以内に出店した新店舗、もしくは現在建設中の新店舗があり、日本の大手百貨店とは打って変わって新規出店意欲が旺盛だ。

 こうしたそごう・西武の海外店舗は、かつては多くがそごうや西武百貨店の現地子会社や現地合弁会社によって運営されていたものの、現在は全社ともに全ての株式を売却済み。その一方で、業務提携・事業協力は続けられており、日本のそごう・西武との共同販促企画や広告プロモーション活動、お互いによる商品供給も実施している。

2022年にそごう・西武で展開されたサステナブルプロモーション「Choice for the Future」。香港そごうでも日本と同様の広告展開が実施された(そごう・西武ニュースリリースより)

 これらそごう・西武の海外店舗は販促活動だけにとどまらず、例えば海外のそごうでは「店内を流れる滝」や「ちきり模様の装飾」など、現地企業が日本のそごう店舗と同様の装飾意匠を採用する例も見られ、FC運営となっても単なる「屋号」のみならず、今もその「のれん」のブランド価値を存分に生かすかたちで百貨店運営をしていることが伺える。

日本のそごうにもかつてあった「世界の人形時計」は遠東そごう4店舗と廣三そごう本店では、提携先を香港ディズニーランドに変えたうえで稼働中。時間帯によっては多くの見物客が時計を見守る。海外のそごう・西武の店舗では、新店舗であっても「日本の百貨店のような装飾意匠」が採用される例が少なくない

 さらに大きな共通点といえるのが「行政主導の開発に参画するかたちでの新規出店」がしばしばみられるということだ。

 特に今回紹介した、現在建設中の3つの新店舗はいずれも「行政主導の大型再開発計画に参画する」かたちで「地域一番店となる巨漢店舗を出店する」というもの。こうした出店手法はバブル期を中心に90年代までのそごうで採られていたものであり、かつての日本法人のノウハウにならった店舗網拡大であるといえるかもしれない。

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