同じ小売業では、ビックカメラのダイナミックプライシングにも参考となる点があります。家電量販店では、値札の付け替え作業が店舗スタッフの業務において大きな比重を占めます。毎日大量の価格変更があり、その度に値札を出力して売り場で差し替えるという膨大な作業が発生しているのです。
これでは接客がおろそかになるのが当たり前です。そこで、ビックカメラは改善を図りました。「電子棚札」を導入したのです。これにより、本社が価格を変更すると店舗側の電子棚札で価格表示が切り替わることで、従来の差し替え業務がなくなり、店員が接客に集中できるようになりました。
ダイナミックプライシングの効果を高めるには、情報発信も大切なポイントです。「偶然安かった」ではなく、「安くなったのを知ったから来た」という流れが理想です。そのためには価格変動したことをLINEなどのアプリで同時に発信することが良いでしょう。
ダイナミックプライシングを実践する際のポイントを整理したいと思います。まず「顧客・市場」「競合」「自社」という3つの視点で考察することが前提です。次のリストは、(1)〜(3)が顧客・市場、(4)〜(5)が競合、(6)〜(9)が自社に該当します。
(1)顧客が払える、かつ買いたくなる価格かどうか
(2)どのエリアにどれくらいのボリュームのお客さまがいるか
(3)価格が来店要因・購買要因になる商品を的確に選定(顧客が品質を重視する商品までむやみな値引きをしない)
(4)競合のどのカテゴリーや商品を対象とすべきか(価格勝負の優先順位付け)
(5)競合の価格をどのように把握するか(店舗の価格をタイムリーに把握する仕組み作り)
(6)競合価格に対してどのような価格(値下げ率やプライスゾーン)が優位か
(7)自社の原価や物流コストなどを加味して利益確保のためにはどの価格が適正か
(8)過去の価格変動による実績で最も売り上げ、利益を最大化した価格はどのラインか
(9)値引き・値下げ・値上げによって自社のブランド力を棄損(きそん)するリスクがないか
これらのバランスを総合的に加味して設定する仕組みを用意しましょう。
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