リテール大革命

ブランドを傷付けないために知るべき、ダイナミックプライシング「9つのポイント」(1/4 ページ)

» 2024年02月28日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 物価の上昇と賃金の上昇のバランスを示す実質賃金は、2023年12月時点で前年比−1.9%、21カ月のマイナスとなっています。つまり、物価上昇に賃金上昇が追い付いていない状況です。

 とはいえ、急に全ての会社が賃金アップをすることはありませんから、賃金の指数は緩やかに変動していく傾向にあります。東京商工リサーチが23年8月に5460社を対象にした調査では、84.8%の企業が賃金アップを実施したという結果も出ています。今後の実質賃金指数の改善には期待が集まります。

 物価上昇の傾向を見ると、帝国データバンクが23年12月に食品メーカーを中心にした調査では、24年1〜5月に値上げを予定している食品は、23年と比べて60.2%も減る予定です(24年1月〜5月:3891品目 23年同期:9781品目)。23年は大量な品目数で値上げがあったので「値上げ仕方なし」の風潮が生活者側にもあったかもしれません。しかし、24年は値上げをする企業が23年よりも明らかに目立つことになり、今後のプライシングにはさらに慎重を要されるでしょう。

プライシングの重要性が高まっている(出所:ゲッティイメージズ)

 地域による所得差にも注意が必要です。dodaが23年12月に行った調査によると、東京と沖縄の平均年収の差は24%もあり、関東と九州・沖縄の平均年収の差は63万(月約5万円)にものぼっています。

 各企業側の事情として、物流に時間とコストがかかり、かつ配送量も少ない地域に対して同じ価格で販売していては、そのエリアは常に赤字になりかねません。その結果、遠隔地からの撤退ということになると、買い物に困る消費者が増加し、社会問題につながります。

 このような市場環境の中で、必要性がさらに高まっているのがダイナミックプライシングです。

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