楽天を襲った「23年ぶり」の異常事態 モバイル赤字減だけでは喜べない深刻すぎる現状(4/4 ページ)

» 2024年02月29日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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23年ぶりとなる「無配」も発表

 楽天グループにとって、まずは25年度の巨額償還をいかに乗り切るか、が大きな焦点です。いよいよ、本業であるECビジネスに直結した中核子会社である楽天カード株の売却も現実味を帯びてきました。そうなった場合に、果たして本業での利益を大きく削ってまで楽天モバイルを運営し続けるメリットがあるのか否か、大きな経営判断を迫られる局面もあるかもしれません。全ては、モバイル事業の黒字化見通し如何にかかっているといえます。

 最後にもう一つ、今回の決算会見で気になったことがあります。会見資料の中で、生成AIの活用をはじめとしたAI戦略の重要性について言及してはいたのですが、23年6月期の半期決算会見時に三木谷氏が嬉々として話をしていたOpenAI社との業務提携について、一言も触れる場面がなかったのです。

 OpenAI社は昨秋にアルトマンCEOの退任騒動がありました。社内で氏の生成AIの行き過ぎた商業利用を危険視する風潮が騒動の原因であると報じられました。楽天との業務提携への影響は避けられないと思われ、大きなアドバンテージになるはずだった施策の雲行きが怪しくなったと感じた次第です。

 赤字幅の問題ばかりに注目が集まりがちな楽天グループ決算ですが、株主の立場からすれば今回の決算で最も大きなニュースは「無配転落」でしょう(前年同期は4円50銭配当)。同社が店頭登録した00年12月期以来、23年ぶりとなる無配です。5年連続の最終赤字かつ無配転落という状況は、通常の上場企業の常識であれば「誤った経営戦略を主導した」として、株主からトップ交代を求められても仕方ない状況でしょう。

 決算数字上は好転の兆しがあるといえ、出口の見えないモバイル事業黒字化への具体的な道筋を見せることが、三木谷楽天の最優先課題であることを再認識した決算会見でありました。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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