楽天グループが2023年12月期の連結決算を発表しました。ポイントは、営業損益で5期連続となる2129億円の赤字を計上したものの、前年の営業赤字から1588億円も改善したことでしょう。
これはひとえに、連結決算の足を引っ張り続けているモバイル事業の収益改善によるところが大きいといえます。モバイル事業単体で見ると、前年同期から営業赤字が1417億円も改善しました。これがいよいよ、本格的な楽天モバイルの正常化につながるものなのか、検証してみましょう。
事業をスタートして以降、楽天グループ決算の足を引っぱり続けているモバイル事業ですが、ECや金融などで得た利益を食いつぶし続けているのが、多額の設備投資です。事業立ち上げ当初には総額として約6000億円を見込んでいたこの投資ですが、既に1兆円を超える巨額を投じています。一言で申し上げれば、事業計画に対する見通しがあまりに甘かった、ということになるわけです。
三木谷浩史氏(代表取締役会長兼社長最高執行役員)が「通信の人口カバー率は98%を超え、目標の99%以上達成はもうすぐ」と語ったのが、ちょうど1年前の決算会見でした。筆者の知り合いの大手通信キャリア幹部がこの発言を聞いて「98%からの1%改善が地獄の苦しみなのを、三木谷さんはご存じないようですね」と言い放ったのが印象に残っています。三木谷氏のどこまでも甘い基地局整備に対する見通しを、象徴する発言であったといえます。
結局、この「1%の重み」を知った三木谷氏は、ほどなくau回線でのローミング拡大を決断します。結果、他社の力を借りて人口カバー率99.9%を達成し、auへの回線賃借の支払いは増えたものの、基地局設置投資は確実にペースダウン。投資額は22年度の約3000億円から、23年度は約1800億円まで抑えることができました。24年度以降の本投資は、さらに年間約1000億円以内に抑えたいとしています。しかし、これまた果たして思惑通りにすすむのか、過去の見通しの甘さからすれば怪しいところではあります。
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