障害者雇用率、4月引き上げ 無理な採用が招く危険とは働き方の見取り図(3/4 ページ)

» 2024年02月29日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

初めての障害者雇用、取るべき2つの方法は?

 しかし、障害者を受け入れる環境を整えようにも、経験がなくどうすればよいか見当もつかない会社は少なくないはずです。その場合、大きく2つ方法があります。1つは、ハローワークなど行政の就労支援機関に相談することです。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、障害者職業センターを各都道府県に設置しています。

 そしてもう1つは、民間の障害者雇用支援事業者を利用することです。自ら障害者雇用を行う中で培われたノウハウを提供したり、中には研究機関を持ち、専門的な見地からコンサルティングを行ったりしている事業者もあります。

 初めて障害者雇用に取り組む会社だけでなく、既に取り組んでいる会社でも採用した障害者がうまく定着しないなど課題を抱えているのであれば、行政や民間事業者のサポートを受けながら環境整備に努めることは、働く障害者にとっても職場にとっても有意義です。

 法定雇用率達成を目指す中で生まれる雇用には、民間事業者の支援を受けて本業と関係ない農園で就業しているからと非難されるケースも見受けられますが、人に必要とされている事業に携わっている仕事は、全てに意義があり、決して否定されるものではありません。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 また、そもそも求人の絶対数が不足している現状において、求人の数が増えること自体が就労志向の障害者の選択肢を広げることにつながります。さらに、就業の機会が生み出されることで、そこから新たなキャリアへと発展していく可能性も広がっていきます。

 それらのメリットを踏まえると、法定雇用率の引き上げは“目標”として有効です。しかし、法定雇用率の達成は、決して障害者雇用を支援する目的ではありません

 各々の事業を通じて障害者の就労支援に携わる、ワークリア、スタートライン、ヘラルボニーの民間企業3社は今年2月、法定雇用率引き上げに先立ち『2024年度法改正に向けた、障がい者雇用に求められる「量」と「質」』と題する勉強会を開催しました。

 そこで強調されていたのは、会社やチームに貢献することでやりがいが感じられるなど、障害者が仕事を通じて活躍することの重要性です。4月から施行される障害者雇用促進法の改正には、法定雇用率の引き上げに関することだけでなく、雇用の質の向上のための事業主の責務の明確化も含まれています。同法第5条には、以下の太字部分が追記されることになります。

 「有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うこと」

 法定雇用率の達成を目指して働きたくても働く場所がない障害者の雇用を増やしていく一方で、職業能力の開発と向上を支援しながら障害者が活躍できる状態をつくり出し、雇用の量と質を両立できて初めて、障害者雇用支援の目的が達成されるということです。

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