ブランディング専門会社のインターブランドジャパンが発表した、日本発のブランドを対象としたブランド価値ランキング「Best Japan Brands 2024」によると、1位は16年連続で「トヨタ」だった。
2位「ホンダ」、3位「ソニー」は23年度調査と同様の結果だったが、4位以降はランキングの入れ替わりや圏外から初めてランキング入りしたブランドも。前年比で高い価値成長率を記録したブランドを見ていこう。
前年期比で最も価値成長率が高かったのは「ユニクロ」(4位、前年比23%増)だった。低価格でシンプルなデザインを取りそろえ、若年層から年配層まで幅広く支持されているアパレルブランド。
20年前から取り組んでいる「RE.UNIQLO(リ・ユニクロ)」プロジェクトでは、服の回収や支援衣料としてのリユース、燃料へのリサイクル、リペアやリメイクを施し1点物の古着として再販するリセールまで一気通貫で展開しており、サステナビリティを着実に事業に組み込んでいる点がブランドの信頼感向上につながった。
僅差でユニクロに敗れたのは「メルカリ」(9位)で、成長率は前年比22%増だった。創業10年目の節目である23年に、グループミッションとして「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を掲げ、その実現のためにAIをいち早く導入。カスタマーサービスセンターから消費者のニーズを迅速に吸い上げ、新しい商品やサービスを創出、商品検索機能も増強している。
そのほか、循環型金融の促進にも注力している。22年11月には子会社のメルペイが「メルカード」の提供を開始したほか、23年3月にはメルカリ上でビットコイン取引サービスもスタートした。グループミッションに基づく事業活動がブランド価値を押し上げた。
成長率3位は「富士通」(34位、前年比19%増)だった。同社はパーパスの実現に向け、23年5月に3つのマテリアリティとともに「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる」というビジョンを設定した。社会課題の解決と顧客のサステナビリティ対応に貢献するとしている。
その実現のために、社内では組織変革や人材育成を積極的に行っている。社外に対しては、サステナビリティレポートの公開やダボス会議への参加、他社との協業を通じて社会問題の解決に取り組む姿勢を示している。
マイナンバーカード証明書交付トラブルによる品質管理問題などが発生したが、パーパスを軸にした、企業としての社会価値創出への取り組みが経済価値にもつながっていると判断された。
次いでランクインしたのは「サントリー」(12位、前年比18%増)だった。同社は23年2月にグループ企業理念を整理・刷新し、機動的に世の中の変化に対応していくことを表明。特に、長年取り組んできた地球環境や社会との共生について、世界規模で全社を挙げて取り組んでいくと示している点が評価につながった。
「味の素」(33位、前年比17%増)も評価された。23年4月に「パーパスアミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を発表し、経営層から全世界の従業員まで全社一体でパーパスブランディングを推進している。
実践活動の一つとして、広告部と生活者解析・事業創造部、オウンドメディアの3部門を統合した「マーケティングデザインセンター」を新設。生活者の体験価値を共創する組織への変革を志向するイノベーションに取り組んでいる。
インターブランドジャパンは、ブランド価値を伸長させた5ブランドには3つの共通要素があると分析している。「Agility(俊敏力:組織としてビジネス機会や課題に対応し、期待を超え続けるため迅速に動くことができるか)」「Coherence(整合性:あらゆる顧客接点でのブランド体験において、一貫性のあるブランドストーリーや世界観が感じられるか)」「Alignment(結束力:組織全体が同じ方向に向かい、その実現に全力を尽くし、事業全体を通じてそれを実行する仕組みを備えているか)」の高い傾向にあるブランドが価値向上につながったという。
また、「外部環境への迅速・柔軟な対応の重要性は引き続き高い。さらにパーパスやブランドが目指す姿を定義するだけではなく、企業文化や事業活動に落とし込み体現することが、ブランド成長に寄与している。サステナビリティ関連施策の実践度が高いだけでなく、社会課題解決をビジネスで経済価値化できている点も、ブランド成長の鍵」と分析している。
本ランキングは、ブランドが持つ価値をインターブランドの独自指標で金額に換算して作成した。本評価の対象期間は22年10月1日〜23年9月30日。
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