2カ月は「働かずに勉強に専念」 KDDI流・本気のDX人材育成法(3/3 ページ)

» 2024年03月04日 10時00分 公開
[仲奈々ITmedia]
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業務時間内で完結させるのがKDDI流

 充実度が高いのは注力育成コースだけではない。一般コースもあなどれない。

 まず、どのコースも「業務で役立つこと」を前提に設計されている。例えば、ビジネス書に載っているような一般的なDXの知識だけを学ぶのではなく、社内で実際にあった事例を織り交ぜたリアリティーのある内容を用いて、研修を進めていく。

 また、一般コースの最大の特徴は、上司の承認があれば誰でも参加できることだ。注力育成コースのように研修にフルコミットするわけではないが、業務時間内で研修に参加することは変わらない。週に4〜8時間程度、つまりは業務時間の1〜2割程度を研修に当てることになる。社員が本業と平行しながらもスムーズにKDUで学習できるよう、上司との調整や受講のサポートをするのも、運営事務局の大切な仕事の一つだ。

 先にも述べたように、リスキリングに重きを置く企業は増えている。しかし、KDDIのように本業の時間の一部、もしくは全てをリスキリングに当てる企業はまだまだ多くないだろう。なぜ、KDDIはこのような運営方法を選んだのだろうか。

 「KDDIでは、社員個人のスキルアップのほか、会社の事業領域の拡大や新しい事業に進出するためにリスキリングが必要だと考えています。

 前者の場合は自己啓発的な側面が強いため、業務時間外の学習が良いかもしれません。でも後者の場合は『会社の成長のために必要だから』と、トップダウンでリスキリングを進めていくべきだと考えています。そのため、業務時間内に学習する時間を会社が用意しています」(木村さん)

(提供:KDDI)

 KDDIのさらなる成長のためにKDUは作られた。スタートからもうすぐ4年、各コースのKDU卒業生たちが、次の時代を作るリーダーとして活躍し始めている。同社では23年度までにグループ全体でDX人財を約4000人に拡大することを掲げてきたが、この目標は現状達成見込みだという。

 現状の成果に満足せず、KDUはさらなるステップアップをすでに考え始めているそうだ。

 「従来の講義に加え、今年度からは生成AIの講義をスタートしました。来年度以降も、時代に即した講義を追加していきたいですね。また、今は5つの領域ごとに講義を提供していますが、もっと業務を細分化して、より実践に即した講義を提供していきたいとも考えています」(木村さん)

 その他にも、KDU卒業生が学んだスキルを生かせる部署に異動できる人事制度の創設や、現状の5職種以外のジョブを学習する場の提供も、すでに動き始めていると言う。

 これまでリスキリングは、「個人のキャリアップのため」に活用されてきた。しかしこれからは、「会社の成長のため」に活用される場面も増えてくるだろう。社員のモチベーションアップにリスキリングをうまく活用できた企業が、激しい競争を勝ち抜いていくのかもしれない。

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