国内の時計市場はここ数年、右肩上がりに成長している。矢野経済研究所(東京都中野区)が発表した調査結果によると、2022年の市場規模は前年比122.1%の8714億円だった。
富裕層を中心に実物資産として高級時計の売れ行きが好調となったことと、訪日外国人観光客によるインバウンド需要が復活しつつあることのほか、若い世代の顧客獲得に成功したブランドが増加したことなどにより2年連続でプラスに推移した。
スイス時計を中心としたインポートラグジュアリーウォッチや、国産ブランドの高価格帯ウォッチが市場をけん引した。流通チャネルでみると、高価格帯のウォッチの需要増加により、それらを主に取り扱う百貨店の好調さが目立った。
コロナ禍をきっかけとして、国内富裕層を中心に高級時計の需要が増加した。矢野経済研究所は、「実物資産として投資対象となったこと、金融緩和により世界的にカネ余り現象となったこと、レジャーを控える代わりの消費活動の一環として購入した、これまで時計に縁のなかった新規顧客が出現したことなどが要因」と分析する。
特に、これまで高級時計に対し関心の低かった若い世代の富裕層は、売却を前提とした投資対象として購入するケースが多く、これまでにない新しい顧客として高級時計の需要拡大をけん引した。
同研究所は、23年の国内ウォッチ市場規模を前年比115.1%の1兆30億円になると予測する。物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まりといった向かい風もあるが、高価格帯ブランドに加え、中核ブランドが貢献するなど底堅さを維持し、またインバウンド需要も回復に向かっていることからプラスに推移することを見込む。
また、近年は補償サービスの拡充に加え、ウォッチブランド自身が修理・メンテナンス体制を整備することにより顧客との信頼関係構築に力を入れるケースが多くみられることから、「安心して購入できる健全な市場となることで新規顧客によるマーケットのすそ野が拡大していくと考えられる」と指摘した
調査は23年11月〜24年1月に、時計関連のメーカー・卸売業・小売業、関連団体などを対象に調査した。
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