攻める総務

AIが仕事を奪う時代に、総務が市場価値を上げるには「総務」から会社を変える(1/2 ページ)

» 2024年03月07日 16時00分 公開
[豊田健一ITmedia]

 AIが人間を超える──。そんなシンギュラリティー(技術的特異点)は2045年までに実現するだろうと、AI研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が予測している。

 ChatGPTをはじめとした生成AIの出現によって、シンギュラリティーの実現はさらに現実味を帯びだした。それ以前から、事務作業を中心に多くのホワイトカラーの仕事がAIやさまざまなテクノロジーに置き換えられている事実もある。

 事務の筆頭的な存在としての総務は、今後、どのような役割を担っていけばよいのだろうか? また、総務がより活躍していくには、どのようなスキルを身に付けるべきなのだろうか? 本稿では、AI時代の総務の役割を考えてみたい。

総務が伸ばすべき3つのスキル

 総務の専門誌「月刊総務」で毎月実施している読者調査の結果を紹介したい。現役の総務の57%が、総務の仕事はAIに代替されると回答している。

photo 月刊総務の調査より

 AIの進展によって総務の仕事はどう変化するかについては、76.4%が「面白くなる」と回答している。この結果を、どのように見れば良いのだろうか。

 AIを活用することで、既存の業務を面白く、また会社により貢献できると見ているのか。あるいは、事務作業をAIに任せ、よりクリエイティブな戦略総務としての働きを実現できるようになると考えているのか。いずれにせよ、AIが人の仕事を奪うことを懸念する向きもある中で、危機感ではなく明るい展望を抱いているのは安心材料である。

 AIの進展という追い風を受けて、総務の役割は変化していくだろう。総務がより活躍を目指すには、3つのスキルを伸ばすべきである。それぞれ、詳しく見ていこう。

他社でも通用するナレッジを「帰納法的思考」で得る

 1つ目は、自社の業務フローのガラパゴス化や、業務の属人化といった状況に捉われず、帰納法的思考で他社でも通用するようなナレッジを得るスキルだ。

 総務の業務には、さまざまな細かい仕事が存在する。それはほとんどの場合、各社各様のフローで処理されており、多くの企業内でガラパゴス化が起きている。

 また総務は、細かい仕事の多さが原因で、属人化が起きやすい部署でもある。その会社の総務のプロとして業務に精通しても、他では通用しづらい人材になってしまう。

 これは業務の改善だけでなく、BPOやデジタライゼーションの観点からも好ましくない。また、「あの人にしか対処できない仕事」が存在している状況が改善されずにいると、その仕事が当人の存在意義になってしまうケースもある。

 各種業務を理解し、回していくことは、総務のプロになる道の基礎であることは間違いない。ここで忘れるべきでないのが、帰納法的思考だ。「帰納法」とは、観察された事実やデータなどの具体的な事実から、一般的な法則を導き出す手法のことだ。特殊な個社の業務フローから、他社でも通用する一般的なナレッジを会得するべきなのだ。

 具体的には、総務の各業務のプロを目指したい。例えば、リスク管理やBCP、オフィスの管理、福利厚生管理、ガバナンス対応……といった業務単位のプロを目指すべく、目先の業務から次元を上げていく努力をしたいものである。汎用的な知識が備われば、他社でも通用する人材となり得るのだ。

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