攻める総務

AIが仕事を奪う時代に、総務が市場価値を上げるには「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2024年03月07日 16時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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業務改善コンサルタントの立場

 2つ目は、総務業務のみならず、全社的なバックオフィス業務の改善コンサルタントとしてのスキルだ。

 総務の仕事は、終わりなき改善を行うことでもある。技術の進歩や外部・内部環境の変化に合わせて、最適解を求め続けていくのだ。改善業務で培われた視点やスキル、ツールに関する知識は、総務に限らずバックオフィス全体の改善業務に活用できる。バックオフィス全体の業務の改善コンサルタントのような立ち位置になれるのだ。

 この場合のバックオフィス業務とは、いわゆる管理部門だけではなく、例えば営業部門のスタッフが行っている事務作業なども含めたものである。全社の全事務作業の改善や、その手ほどきをする、部門をまたいだ業務改善コンサルタントだ。

 業務の種類、職種の種類を問わずに業務の改善ができれば、他社でも通用するスキルは十二分に身に着く。独立して事業を行うことも視野に入るだろう。

 業務改善の中心となるのがデジタライゼーションだ。労働力不足の解消が見込めない中、人力を期待して業務を構築するのはリスクがある。すでに存在するツールに置き換えたり、RPAで対応したり、さまざまなノーコードアプリで対応したりといった積み重ねが、大きな財産となるはずだ。また業務改善の前に、そもそもの業務の意味や目的を理解した上で逆算することで、業務をブラッシュアップし、最短距離で成り立つように構築していく。

photo (提供:ゲッティイメージズ)

チェンジマネジメントの達人

 3つ目が、チェンジマネジメントのスキルである。

 業務改善することで、当然ながらフローが変わったり、新しいツールを導入したりと、現場に変化が生ずることが多々ある。あるいは、さらにより良くするために新たな施策を導入することもあるだろう。

 人間は変化を嫌う生き物である。新しい施策に相応のメリットがあると分かっていたとしても、懸念を口にしたり、なかなか必要な作業に着手できなかったりする。それを各従業員が受け入れられるようにする、チェンジマネジメントの達人である。

 総務が戦略総務として、会社をより良くするために新しい施策を導入する際にチェンジマネジメントをしていくのと同様に、全社の業務改善におけるチェンジマネジメントを担当する。また、他の部門で新たな施策を導入する際にも、チェンジマネジメントの手助けを行う。

 「他部門の困りごとは総務が助ける」状況が実現できれば、真の意味での全社の縁の下の力持ちになれる。単なる備品の修理や依頼事項の対応ではなく、本質的に必要なことに対してのサポートである。そして、業務改善同様に、職種、業種を超えてチェンジマネジメントの達人となれば、市場価値が相当高い人材となるのではないだろうか。


 自社だけで通用する人材にとどまらず、他社でも活躍できるためには何が必要かを考えていく。それは、自社にさらに貢献できる人材となることでもあるのだ。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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