朝のラッシュ時に、なぜ関西の私鉄は「有料座席サービス」を導入できるのか関東との違い(3/4 ページ)

» 2024年03月14日 08時05分 公開
[小林拓矢ITmedia]

近年の関西私鉄ビジネスの特徴は?

 関西の鉄道業界は、私鉄同士、あるいは私鉄とJR西日本との間で激しい競争を行っている。関東のように東京都が中心となってその周りに中規模の都市がドーナツ状にあるわけではなく、大阪が中心となっているものの、京都・神戸といった政令指定都市が存在し、ほかにも奈良・和歌山といった都市がある。それぞれで私鉄とJR西日本が競争関係にある。

 そうした環境の中で、JR西日本の存在感が増してきた。私鉄と同様の転換クロスシート車両を増やしていき、本数も増加。「私鉄並み」のサービスが提供できるようになってきた。

 より利用者を増やすにはどうするか。より利用者に満足してもらうには何をすればいいのか。そういったことを関西の私鉄は鉄道事業の戦略として考えている。

 一方で、私鉄の運賃はJRより安い傾向がある。ただ、理由もなく運賃を上げるのは印象が悪い。鉄道の客単価をアップするには、どうしたらいいのかを考える必要がある。そんな中で生まれたのが、有料の座席指定車両である。

 南海電気鉄道は和歌山方面の特急列車「特急サザン」で既に座席指定サービスを導入しており、京阪電気鉄道も「PREMIUM CAR(プレミアムカー)」を17年に導入。競争を意識してJR西日本も座席指定車両を新快速の一部に導入している。

特急サザン12000系(出典:南海電気鉄道)

 そんな中で関西私鉄のリーダー的存在、言い換えると「沿線格差」の最上位に位置することを自他ともに認める阪急電鉄が、特別な車両を導入し、有料の座席指定サービス「PRiVACE」を開始する。よりゆったりと利用してもらうことで、客単価を上げる。これが狙いである。

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