「良いこと」ばかり伝える1on1は危険 マネフォに聞く、評価を“サプライズ”にしない工夫後編(5/5 ページ)

» 2024年03月18日 09時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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問題が起きる前に 先手を打つ人事施策

──お話を聞いた感じだと、放っておいても自分で学びに行くタイプの方が多そうですね。例えば1on1研修を提供しようと人事で決めたのには、なにか理由があったのですか?

石原さん: はい。もともとは「1on1を毎月やりましょう」という呼びかけだけがあって、みんな見よう見まねでやっているような状態でした。研修を始めたのには明確なきっかけがありまして、それは21年末に行った人事制度の大きな変更です。

 より活躍している人が報酬面でも報われる制度にしようという狙いで、活躍に応じて昇給率を引き上げ、高いパフォーマンスを上げれば賞与も反映される仕組みにしました。逆に、成果が十分でないような場合には減給もあるという制度にしたんです。

 それまでよりも評価が給与に影響する度合いが大きくなるということで、月次の1on1で上長とメンバーの考えをきちんとすり合わせていかないと、半期評価に対する納得度が下がってしまうことが懸念されました。そこで、1on1研修や目標設定研修を実施して、やり方を身に付けてもらおうということになったんです。

──なるほど。「Leadership Forward Program」の開始には、なにかきっかけがありましたか?

石原さん: 組織が成長して人数が増えていく中で、初めてマネジャーや事業責任者になる人が増え、学ぶ場のニーズが高まっていたことが一つです。

 また、人数が増えて経営陣と直接顔を合わせることが少なくなっていたところに、コロナ禍がその状況を加速させました。社歴の浅いメンバーが増えていたこともあり、マネジャーの皆さんに会社の方向性を理解してもらうという意味でも、経営陣と直接会って「マネーフォワードらしさってなんだろう?」といった話をできる機会の重要性が増していました。

 こんな感じで、1on1研修にしても「Leadership Forward Program」しても、今あるいは直近の会社の変化に対して起きる課題を見越し、その対応策として導入してきたという面が大きいです。

──問題が起きてしまってから慌てて対応するのではなく、予測される問題を防ぐために研修や社内のコミュニケーションといった手を打っているんですね。

石原さん: そうですね。できる限り先手を打つようにしたいと考えています。

 過去には、マネーフォワードのカルチャーに合わない人を採用してしまった結果、社内でのトラブルが増えてしまったこともありました。そこから学び、何かが起きてからではなく、起きないように前もって対策しようという意識は、社長の辻を筆頭に浸透しています。

 私も辻から言われてすごく気を付けているのは、ある部署の一人のメンバーのことが問題になったときに、それが固有の事象なのか、他でも発生しうることなのかを見極めることです。

 つい「この人の問題」と捉えがちですが、もう少し俯瞰してみることで「こういう問題は他の部でも起き得るよね」とか「こういう仕組みになっていたら起きなかった問題だな」といったことが見えてきたりするんです。起きた問題への対応を迅速にすることも大事ですが、そもそも問題が起きないようにするにはどうしたら良いかと考えています。

石原千亜希CHO

やつづかえり

コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。

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