マネーフォワードでは月次での1on1実施率が95%を超え、「評価面談や1on1において、上長から良い点と改善すべき点に関するフィードバックが得られている」という指標でも平均4.2(5点満点中)と、社員からの評価が高い。
上司と部下のコミュニケーション方法として、多くの会社が1on1を取り入れているが、うまく機能しないケースも多い。同社の1on1は何が違うのか。CHOの石原千亜希氏に話を聞いた。
<前編:「優しさだけではなくピリッと」 マネフォCHOが語る“本気の”人的資本経営>
──マネーフォワードでは社員からの1on1の評価が高いですが、何か秘策があるのでしょうか。
石原さん: この2年くらいは特に、「皆さんのミッションである組織の成果の最大化のために、1on1はすごく大事で意味がある」と管理職に伝え、具体的な方法も学んでいただくことに力を入れています。管理職全員に合計3時間ほどの1on1研修を受けてもらい、なぜ1on1が大事なのか、具体的にどうやったら良いのか、座学だけでなくワークショップも交えてインプット。新任マネジャーでもある程度のレベルでできるようにしています。
また、半期の目標を設定する少し前の時期には、目標設定研修も行っています。これは管理職に限らず誰でも受けられるものです。
──目標設定と1on1が密接に関係しているということですか?
石原さん: はい。半期ごとに設定する個人の目標について、毎月の1on1で本人の評価と上長の評価を確認し、すり合わせるんです。
──半期の目標について毎月その進捗を確認していくのですね。そうすると、本人は半年がんばって良い評価をもらえると思っていたのに、ふたを開けてみたら低評価だった……みたいなことが起こりにくいでしょうね。
石原さん: そうなんです。以前はそういうこともありましたが、組織や上長に対する不信感につながってしまいますよね。
毎月の1on1で評価を確認することは以前からやっていたのですが、今はそれをきちんとテキストに残すように徹底しています。
というのも、マネーフォワードの人たちはみんな優しいので、上長も良いことしかフィードバックしない傾向があったんです。そうすると、1on1で手応えを感じ、本人はS評価だと思っていたのに、ふたを開けたらA評価だった……みたいなことが結構起きていて。
それでは良くないので、今は毎月記入する評価のシートに「Good」と「More」という項目を作り、良いところ(Good)だけでなく「もう少しこうすると良い」こと(More)も書くようにしているんです。
──1on1で評価について話し合うとなると、ある程度準備をして臨む必要がありそうです。
石原さん: そうですね。決まったフォーマットがあり、メンバーは1on1の前に、目標に対してその月は何をしたのか、その出来具合はAだったのかBだったのかといった自己評価を記入します。1on1の場ではメンバーが自己評価の内容を説明し、上長は口頭でフィードバック。GoodとMoreの欄に書き残すという形になっています。
これを毎月繰り返し、半期末には、本人の振り返りに基づく自己評価に加え、1年以内に何をしたいのか、もう少し長期の2〜3年では何をしたいのかも書きます。それに対して上長は、何が良かったのか、どんなことをすればもっと良かったのかなどを書いた上で評価を付ける──という運用をしています。
──それぞれの部下にこれをやる上長は、結構大変では?
石原さん: そのような声も、一定数はあります。それでも「これを怠った方が、後で大変になりますよ」といつもお伝えしています。「大変かもしれないけれど、やった方が絶対チームのためになるし、あなたのためにもなるので、やってください」と。
──なるほど。1on1では、目標とその評価以外の話もするのでしょうか?
石原さん: 何を話すべきかは、上長とメンバーの関係性や普段のコミュニケーションの頻度などによっても違うので、きっちり決めているわけではありません。「こういうことを聞くといいですよ」ということは提示していて、その中で取捨選択してもらうような感じです。
1on1研修では、自分が1on1をしている相手に関して知っていることを、思い付く限り書き出してもらうワークがあります。例えば、その方は入社前に何をしていたのか、今後何をしたいかといったキャリアの話のほかに、家族構成や趣味といったプライベートなこともありますよね。
これをやると、仕事の話に限らずいろいろな話をしているのか、過去や将来の話もしているのかなどがある程度分かるんです。そうやって振り返った上で、「じゃあ、こういう話もしてみようか」と考えてもらったりしています。
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