マネーフォワードは昨年末、自社の人事戦略をまとめた『Talent Forward Strategy 2024』を公開した。50ページを超える充実した内容だ。
以前の記事でも触れたとおり、同社の統合報告書では人的資源に関して詳しく開示している。また、採用サイトや社員のSNSなどでも、人事制度や社内で行う研修について積極的に情報発信している。
その上でさらに『Talent Forward Strategy 2024』を制作したのはなぜか? 同社がここまで「人」を重視した経営戦略を講じる理由について、石原千亜希CHOに聞いた。
──『Talent Forward Strategy 2024』はボリュームのある内容ながらとても読みやすく、かなり力を入れて制作されたことがうかがえます。どのような体制で進められたのですか?
石原さん: 人事の中から私と副本部長と採用広報のメンバーの3人に加え、社内のデザイナーに入ってもらいました。
──すでに統合報告書やさまざまなメディアで人事施策について発信されているなか、これを作ろうと考えたのはなぜですか?
石原さん: マネーフォワードが人事戦略をどう考えているのか、その全体像を伝えたいと思ったんです。
統合報告書ではどうしてもページ数が限られていますし、noteなどでもいろいろと発信してはいるものの、個別の施策に関する単発の内容が多かったんですよね。それらをまとめて、たくさんある施策の裏側で何を考えているのかも含め、ストーリーとしてお伝えしたいと考えました。
伝える相手としては社外と社内の両方を想定しました。社外については、人的資本に対する関心が高まり、投資家や採用候補者の方々からすごく見られているなという実感があります。私は新卒の最終面接を担当していますが、かなり多くの方が自主的に読んでくださっています。
社内のメンバーに、会社が社員を大事にしているということを、改めて感じてほしいという思いもありました。普段からマネジメントが発信しているので、すでに分かっている部分も多いとは思います。それでも、ここ数年で2000人を超える規模になり、全員が同じ理解ではないんですよね。そういう意味でも、これを作って良かったと思います。
──マネーフォワードの人事に対する考え方がこれを見れば分かる、というものになっているんですね。
石原さん: はい。前半がこれまでにやってきたこと、後半がこれから力を入れていくことという2部構成になっているのですが、当初は前半部分を作る予定はありませんでした。
人的資本開示に関するセミナーなどでは「将来の組織の理想像と現状とのギャップを分析し、それを解消するための戦略を描いていきましょう……」という話をされることが多く、最初はそれに沿った構成を考えていました。ただ、途中で「あんまり面白くないな、マネーフォワードらしくないな」と思って。
というのも、マネーフォワードにはすでに人を重視するというDNAがあり、いろいろなことをやってきているんです。今の課題よりも先にそれを伝えた方が、マネーフォワードが考えていることが伝わるんじゃないかと感じました。本当は一枚の絵にした方が分かりやすいし、前半と後半のパートで重複する話もあるのですが、無理に一つにするとこぼれ落ちてしまう部分がありそうで、あえて2つに分けて書いています。
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