オフピーク定期券「値下げ」の迷走、なぜ売れない? どうしたら売れる?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2024年03月23日 08時15分 公開
[杉山淳一ITmedia]

オフピーク定期券とは

 オフピーク定期券は、東京の「電車特定区間」内で完結する定期券において、ピーク時間帯に利用しないという約束で販売する定期券だ。「電車特定区間」とは、国鉄時代に「国電区間」と呼ばれたエリアだ。簡単にいえば「通勤電車が走り、私鉄と競合する区間は安くします」という話である。JR発足と同時に「国電区間」は「電車特定区間」と呼び方が変わり、京葉線など新規開業区間が追加された。詳しい区間を図に示す。

オフピーク定期券の販売区間(電車特定区間)(出典:JR東日本、オフピーク定期券発売中!

 オフピーク定期券は、この区間内のみ発行される。例えば大船〜東京間は発行可能だけど、大船駅の西隣にある藤沢駅では発行できない。電車特定区間はJR東日本が考える「主な通勤圏」ともいえる。

 またオフピーク定期券は、各駅に個別に設定したピークタイムは利用できない。オフピーク定期券を設定したSuicaを自動改札機にかざすと普通運賃としてチャージ金額から差し引かれる。ピークタイムの例を見ると、新宿駅は7時30分〜9時、大船駅は6時40分〜8時10分、高尾駅は6時28分〜7時55分などで、都心に近づくにつれて時間帯は遅くなる。だいたい山手線の駅に7時30分から9時に到着しそうな時間帯のようだ。詳細はオフピーク定期券の公式サイトで紹介している。

主な駅のピークタイム(出典:JR東日本、オフピーク定期券発売中!
路線ごとのピークタイムも公開されている。都心に近づくほど遅い時間帯になる(出典:JR東日本、オフピーク定期券発売中!

 オフピーク定期券はピークタイムを除いた時間帯のみ割引定期運賃が有効になる。大船駅から乗るときは、6時40分〜8時10分以外の時間帯に駅の改札を通る必要がある。これ以外の時間帯に通れば到着時刻は問わないので、快速に乗ってもいいし、各駅停車に乗ってもいい。6時半に改札を通り、エキナカでお茶や朝食を済ませて9時半に出勤してもいい。

 しかし、ピークタイムに乗車駅で改札を通った場合にオフピーク定期券は利用できない。改札口が閉じて通れないわけではなく、普通運賃で利用したと見なされてチャージ金額から運賃を差し引かれる。いつでも改札機を通過できるから気付きにくい。

 そこでJR東日本は電車特定区間の自動改札機の表示部分を改良した。オフピーク定期券に対応するため、ピーク時は「ピーク」の文字が出る。ピークが表示されているときはオフピーク定期券適用外となってしまう。夕刻にピークタイムが設定されていないから、帰りはオフピーク定期券利用となる。夜勤の人は朝の帰りの時間帯に注意しなければいけない。

時計を見なくても改札機の表示でピークタイムを確認できる(出典:JR東日本、オフピーク定期券発売中!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.