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役職定年した“年上の部下” 「期待されていない」と意欲低下も、どう接する?(1/2 ページ)

» 2024年03月25日 07時00分 公開
[児玉結ITmedia]

 高齢になっても働き続けたいと考える人は多く、60歳以上の2人に1人が、65歳を超えても働き続けたい、または働けるうちはいつまでも働きたいと考えているとの調査結果もあります(内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」 2019年)。

 一方で、役職定年制を運用している企業では、役職定年後の社員のモチベーションダウンやマネジメントの難しさについて悩む声も聞かれます。

 主に50代以降の会社員に、課長や部長のポストをしりぞいた後もいきいきと活躍してもらうためには、どのような関わりが有効なのでしょうか? 本稿では、役職定年後の部下に管理職としてどのようにアプローチすべきかを考えます。

役職定年すると変わること

 筆者が在籍するリクルートマネジメントソリューションズは、21年に「ポストオフ経験に関する意識調査」を行いました。この調査では、従業員規模300人以上の企業に勤める50〜64歳のポストオフ経験者(※)766人に、ポストオフ前後の経験について尋ねています。

(※)ポストオフ経験者:役職定年制度・役職任期制度(一律の年齢や期間で組織長などの役職を外れる制度)やそれに準ずる運用が自社にあり、自身が一律の年齢や期間で組織長などの役職を外れるポストオフの経験をした人を本稿ではポストオフ経験者と呼びます。

 調査の結果、ポストオフ後に賃金が下がったと回答した人は全体の82.8%に上りました。また、ポストオフ前と比べて周囲から期待されることが減ったと感じている人も半数以上おり、仕事量や労働時間が減った・人事評価が下がった人も半数以上という結果でした。

 さらに、職場で1日に会話する人の数や、自ら主体的に仕事を進める度合いも減ったという声が多く、ポストオフが職務生活に大きな影響を与える様子が見て取れます。

photo リクルートマネジメントソリューションズ「ポストオフ経験に関する意識調査」2021年

 報酬が下がり、期待されなくなり、周囲との会話も減り、主体性も発揮できなくなる──そう考えると、役職定年したシニア社員に、モチベーション高く働けというのも無理があるように思えます。

 また近年では、そもそも年齢で一律に処遇を決めることの難しさ、環境変化による人材不足などを背景に、役職定年制度を見直す企業も出てきています。

 50代以上の部下を持つ方は今一度ご自身の会社の制度を確認し、役職定年制度・役職任期制度の有無や位置付け、処遇や今後の見通しをしっかりと理解しておくとよいでしょう。

関わりのポイント(1)相手の良さを見つけ、敬意を持つ

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 さて、実際に役職定年したシニア社員が部下になったとしたら、あなたはまず何から始めますか?

 関わり方のポイント1つ目は、相手の良さを見つけて公に認め、敬意を払うことです。これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、意外と難しいことでもあります。

 年齢の上下の意識が管理職としての振る舞いに表れてしまい、年下の部下にははっきりものが言えるのに、年上の部下には言いづらい、という人は少なくありません。

 しかし本来、組織は共通の目的に向かって集団の力を発揮するためのものであり、理屈から言えば年齢の上下は目的の達成とは関係がありません。それよりも、メンバーにどのような能力・スキルがあり、どのような強みを引き出せば集団の力をより大きくできるのかが重要です。

 役職定年した部下が、ポストオフ前の意識のままで偉そうにしている場合もあれば、すっかりやる気を失っている場合もあるでしょうが、いずれにせよ管理職の仕事はその人ならではの良さを見つけ、引き出して組織の成果につなげることです。

 まずは相手の良さを見つけることに注力しましょう。どんなシニア社員にも、良さはあります。そして、良さを認めてもらえることは、誰にとってもうれしいものです。本人の良さを見つけ、その良さを本人や関係者に伝え、一人のビジネスパーソンとして敬意を払うことが、その後の仕事の土台となる信頼関係を築きます。

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