「1億円超の損失」「相次ぐ社員の退職」を乗り越え上場 マネされにくい立ち飲みチェーンはどのように誕生したのか(1/4 ページ)

» 2024年03月26日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

 小型の立ち飲み居酒屋「立呑み焼きとん大黒」を成長させ、2024年2月に上場を達成した光フードサービス。前編では、同社の大谷光徳社長が創業した後、店内で初対面のお客さま同士が笑顔で語り合うコミュニティーが出来上がっていったことに気付くまでを紹介してきました。後編となる本記事では、多店舗展開の失敗やコロナ禍を乗り越え、本格的なチェーン展開をしていく過程に迫ります。

 聞き手は、飲食店コンサルタントの三ツ井創太郎(スリーウェルマネジメント代表)。

「立呑み焼きとん大黒」で成長(提供:光フードサービス、以下同)

新たな営業スタイル“トライアングル”の誕生

 「もっと多くのお客さま同士をつないでいきたいという思いから生まれた営業スタイルが“トライアングル”です。これはスタッフが、知らないお客さま同士の橋渡し役となるもので、スタッフ1人と初対面のお客さま2人が三角形の形になることからトライアングルと名付けました。私もスタッフも毎日営業をする中で、このトライアングルを店内でたくさん発生させることを最優先にしました」

大黒の営業スタイル“トライアングル”

 「売り上げを上げる」「お客さまを増やす」といった最終目標を達成するための重要な行動プロセスを管理する経営手法を「KPI(Key Performance Indicator)=重要業績評価指標」管理と言います。

 大谷社長は、お客さまを増やすためには、常連さんのコミュニティーをつくることこそが大切だと気付き、さらにそのコミュニティーづくりのきっかけとなる第一歩としてトライアングルを明確なKPIとして定めたのです。

 それからは「売り上げを上げる」「お客さまを増やす」といった漠然とした目標ではなく、どれだけ多くのトライアングルを日々、店内で発生させられるかを徹底的に考え、実行していきます。

 なお、このトライアングルは現在でも光フードサービスの中では重要なKPIとして位置付けられており、人事評価の際の重要なポイントにもなっています。

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