特別な販促をしたわけではないのに、販売数が2019年ごろから急激に伸びてきたサントリーの焼酎がある。商品名は「ジャスミン焼酎〈茉莉花(まつりか)〉」。焼酎市場自体はダウントレンドなので、同社社員が不思議に思って調べたところ、珍しい売れ方をしていることが分かったという。
なぜ急に売れ出したのか。そして、そのビジネスチャンスにどう対応しようとしているのか。茉莉花ブランド担当の永尾真紀氏に話を聞いた。
茉莉花は、ジャスミン茶葉「銀毫(ぎんごう)」からつくったさわやかな香りの乙類焼酎と、すっきりした後口の甲類焼酎を合わせているのが特徴だ。発売したのは2004年。当時の甲類焼酎は中高年男性に支持されていたが、女性や若い層でも楽しめるような商品として開発された商品だった。
サントリーとして特に大規模なマーケティング活動をしていたわけではなく、飲食店を中心に取り扱いをしていた。業務用と家庭用を合わせて19年の出荷数は約2万ケースだったが、23年には約14万ケースに急増。特に、業務用の伸びは著しく、20年は対前年比137%、21年は同170%、22年は同208%となった。
売り上げ構成比の高いエリアを調べてみると、近畿と沖縄で強く支持されていることが判明した。そこで、永尾氏が同社の営業担当者、飲食店・酒類店の関係者に話を聞くとジャスミン焼酎をジャスミン茶で割って楽しむ「JJ(ジェージェー)」ブームが起きていることが分かった。JJとは、ジャスミン焼酎とジャスミン茶の頭文字を表している。SNSでは「当店ではJJを扱ってます!」といった発信をする飲食店が多く見られた。
正確な経緯は不明だが、大阪や沖縄のボトルキープ業態の業務店でJJが生まれ、そこから口コミなどで自然発生的に拡散していったとサントリーは分析している。飲みやすいJJがお店の女性キャストを中心に支持されていた。食事との相性も良いので、飲食店にも浸透していった。
消費者に支持される理由としては「非炭酸なので、お腹にたまりにくい」「甘くないので、料理に合わせやすい」「アルコール感が苦手だけど、JJなら飲みやすい」といったことが見えてきた。
また、JJという語呂の良さから「JJ? なにそれ」「ジャスミンのお酒をジャスミン茶で割ったやつ」「じゃあ、JJで」といったやりとりが生まれやすいのも、拡大の背景にあると見られる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング